【孫社長にたたきこまれたすごい「数値化」仕事術】まとめ

英会話 トライズ 三木雄信 ビジネス術

「ビジネスでは数字に基づいて意思決定をするべきである」 

それを知っていても具体的にどう数字を集めて分析し、次の施策につなげるのかイメージができないという方も少なくありません。なぜならば、数値化の技術は言葉にされることが少なく、多くの職場ではある種の「暗黙知」として扱われているからです。 

私、三木雄信は10年以上前にソフトバンクの孫正義社長の社長室で働き、現在はコーチング英会話トライズを経営しています。孫正義社長が誰にでも再現可能な数値化の技術を幹部達に指導している姿を見て、本物の数値化仕事術がどのようなものであるかに気づくことができました。孫正義流の数値化仕事術とは、多くの日本企業で見られる「上から押し付けられる“受け身の数値化”」ではなく、「下が上を動かせるようになる“攻めの数値化”」でした。その詳細を、書籍【孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術】として公開しています。 

その中から、本記事では全体を俯瞰する内容として「数値化がもたらす効果」と「ソフトバンクで採用されている応用例」をご紹介します。 

数値化によって生産性が劇的にアップする根本的理由 

ビジネスにおいて利益は非常にシンプルな式で表すことができます。 

(利益)=(売上)ー(経費) 

つまり、売上を最大化し、経費を最小化することができれば、ビジネスモデルにかかわらず、利益を高めることができるのです。さらに売上や経費も素因数分解することができ、その要素は業種や企業によって異なります。言い換えれば、「いかなる業種であっても問題を数字に置き換えることで、現状を正しく把握し、問題の要因を明確にできる」ということです。これが数値化によって生産性が向上する根本的な理由です。 

以前私が「Yahoo!BB」のコールセンターを統括していた時、コールセンターには毎月100万件以上の電話がかかってきており、業務コストが大きくかさんでいました。そこでコールセンターに寄せられた問い合わせやクレームの記録を全てプリントアウトし、内容の種類別に分けてみたのです。すると大きく分けて7種類ほどに分けられましたが、その内の2つは、他に比べても圧倒的な山になりました。パッと見ただけでもこの2つだけで全体の8割ほどを占めていることがわかりました。

そこで2つの問題を解決することにだけ焦点を当てることで全体の8割にあたる問題をできる限り小さくし、オペレーションコストを削減することに成功しました。このように、集めたデータを分類し、優先順位をつけるというごくシンプルな数値化だけでも年間何千万円という経費を削減することができるのです。 

現代のビジネスに置いて最も重要な5つの指標 

ビジネスにおける数値化とは、何を測れば良いのでしょうか? 

多くの仕事に「顧客の身長」や「顧客の体重」を集めてもほとんど効果がないことはすぐに分かります。つまり、仮説検証に使える指標に絞って計測・分析する必要があるのです。先ほど売上と経費の内訳には触れませんでしたが、それらは主に5つの指標から成り立ちます。 

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売上を構成する指標 

  • 顧客数
  • 顧客単価   
  • 残存期間 

経費を構成する指標 

  • 顧客獲得コスト 
  • 顧客維持コスト  

これら5つの指標を数値化することで、多くの場合には経営改善につなげることが可能です。特に、現代のビジネスでは「サブスクリプション型の契約」に見られるように、いかに長く利用してもらうか(残存期間を伸ばすか)が重要視されています。世界的にこのような傾向が出てきたのはごく最近ですが、孫社長は10年以上前から「牛のよだれのようなビジネスが1番いい」と言っていました。これは牛のよだれのように、継続的に儲かり続けるビジネスが会社にとって都合がいいということを意味しています。その先見の明には脱帽です。 

ソフトバンクの「三次元経営モデル」 

ソフトバンクの三次元経営モデルとは、上記の5つの指標を改善するために次の4つの段階に分けて施策を打つことをさします。 

  1. 顧客数を増やす 
  2. 顧客単価を上げる 
  3. 顧客獲得コストと顧客維持コストを下げる 
  4. 残存期間を延ばす 

顧客数を増やして線を伸ばし、そこに顧客単価をかけて面を作ったら、最後に時間軸を加えて立方体を作り上げるイメージから「三次元経営」と呼ばれています。 

まずは顧客数を増やすことから始まります。このステップでは顧客単価やコストは度外視して、最初はとにかく顧客数を最大化するというただ一点に集中します。「Yahoo!BB」の時も、もちろんこのやり方を実践しました。しかも、桁外れの顧客数を目指したのです。当時ADSLの事業者が年間に発注するモデム数は1万~3万だったのですが、孫社長は「100万台発注するぞ!」と号令をかけたので、私たちですらその言葉に耳を疑いました。結果的には3ヶ月で100万契約を達成し、あっという間にナンバーワンの顧客数を達成しました。ここには「Yahoo!BB」がADSL事業の後発であるにも関わらず、大きなシェアを占めることになる2つのトリックが隠されていました。 

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1, 大量発注で原価を下げられる

1つ目には大量発注で原価を下げられることです。工場の稼働時間に応じてモデムの価格が下がるので、多くの製品をまとめて作った方がコストを抑えることができます。他の事業者の100倍程度の規模で行うことにより、安価な供給を実現しました。 

2, ネットワーク外部性の活用

2目にはネットワーク外部性と呼ばれる効果を活用したことです。これは「ユーザーが多ければ多いほど、そのサービスの便益が増加する現象」を指します。例えばオークションサイトでは出品者が多ければその分品揃えが増え、入札者も増加します。この効果によって、「Yahoo!BB」はさらなる顧客を獲得し、好循環を形成していきました。 

顧客単価を上げるためには「付加価値の高い追加サービスはオプションを提供する」ことが必要です。しかし、これは新規顧客の獲得に比べるとそれほど難しくはありません。車にしろトレーニングジムにしろ、高額な買い物を買う決断をした人は、追加購入に対する心理的なハードルが下がっているからです。 

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「Yahoo!BB」のケースではサービス開始当初は顧客単価が2000円台でした。それが5年後の2006年には、ほぼ2倍の4395円にまで上がったのです。これを可能にしたのが、積極的なセット販売の提供でした。月額料金990円を上乗せすることで無線LANが使い放題になるという強みを打ち出し、さらに2ヶ月無料キャンペーンも加えました。無線LANの快適さを一度知った人は、わざわざ有線LANに戻ろうとはしません。そのため、無料体験ユーザーが契約顧客に移行し、顧客単価を大きく引き上げることに成功しました。 

顧客獲得コストと維持コストについては、それぞれの内訳をチャネル別に求めることから始めます。例えば「街頭販売」「Web」「電話営業」「訪問販売」などに分け、どの手法にいくら費用をかけ、何件受注を取れているかを記録します。それによって効果の低い販売チャネルを廃止することや、改善することが可能になります。維持コストについてはいくつもの施策を段階的に打つ場合を想定します。次の図ではキャンペーンAからキャンペーンHを用意し、「どの施策までを行うのが効果的か?」を小規模試験の結果から決定する場合を示しています。 

(本書【孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術】 より引用) 

表中のLTVは「顧客が一生涯で使ってくれる費用」を意味するLife Time Valueの略称です。イメージとしては顧客1人あたりの売上と思っていただければ問題ありません。一般に、キャンペーンは序盤では大きな効果を発揮し、何度も打てば打つほど解約の意思の強い顧客が残るので、キャンペーンの効果が減少します。そこで上記のような損益計算表を再生することで、「キャンペーンFまで行うのがベスト」という結論を導くことができるようになります。 

残存期間の延長については顧客のカテゴライズを行い、「どんな条件の顧客がどのくらいの期間契約してくれているか」を洗い出します。そうすることで積極的に取りに行くべき顧客と、そうでない顧客のセグメントを明確に分けることができます。 

まとめ 

ビジネスの要素は数式で表すことができます。本記事では、その数式の骨格となる5つの指標と、指標を売上につなげるための具体的なステップを4つに分けてご紹介しました。より詳しい内容については書籍【孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術】に記載していますのでご参照ください。 

私はこのメソッドを体得し、コーチング英会話トライズでも受講生4,000名を越すほどに成長させることができました。全くのゼロから始めた事業が、これほどまでに軌道に乗ったのも孫社長から教わった数値化仕事術が経営者としての私の土台をしっかり支えているからです。ぜひ皆さんも数値化によって、再現性の高いビジネスマンスキルを身につけてください。