前回までの記事では、孫社長の考えるプレゼンテーションの本質と具体的な作り方について解説させていただきました。今回の記事ではそれらを踏まえ、プレゼンテーションの効果を劇的に高める10の方法について1つずつ解説して参ります。
プレゼンテーションにも本質的な考え方があり、具体的なノウハウがあり、そして細かなテクニックがあります。今回はそのテクニックの部分を解説して参りますのであなたのビジネスにも活用して頂けたら幸いです。それでは始めていきましょう。
目次
ファッションもプレゼンテーションの一部だ!
「今日は、ユニクロのポロシャツできました。」
2001年6月、ソフトバンクはブロードバンド事業のYahoo!BBを開始するに当たってのプレゼンテーションで孫社長が言った言葉です。この時の孫社長の狙いは、新規のブロードバンド事業に対し、「手頃な価格で高い品質」というイメージを聴衆に与えたかったのです。
ファッションや身だしなみに注意を払う考え方は孫社長に限らず、例えば経営の神様、松下幸之助さんは10日から2週間に1回の頻度で髪を切りに行っていましたし、アメリカでは相手に対する印象を良くするためにデンタルケアは当たり前と言われています。ファッションもプレゼンテーションの一部であることを肝に銘じておきましょう。
言葉以外のコミュニケーション力
ファッションの他に、言葉以外のコミュニケーション力としてポイントとなるのは「目」「ジェスチャー」「口調」の3つです。
ポイント1 「目」
まず「目」について。目線はメモや原稿に向けるのではなく、常に聴衆に向いていなければ良いプレゼンテーションを行うことは不可能だと思って下さい。
ポイント2 「ジェスチャー」
次に「ジェスチャー」。孫社長はよく、プレゼンテーションを行う際に、決して演台に縛られることなく、ステージの上を自由に歩きながら、ときに両手をオープンにして話すことをします。これにより相手に対し、柔軟でオープンな印象を与えることが可能となります。
ポイント3 「口調」
そして最後に「口調」です。ポイントは「最初は淡々と、最も伝えたいところは情熱的に」です。
こうした言語外のメッセージが聴衆に与えるイメージは言葉をはるかに越えると言っても過言ではないでしょう。「目」「ジェスチャー」「口調」、注意したいポイントです。
プレゼンテーションの効果は共演者が決める
プレゼンテーションを行う際、一人で行うよりも共演者と行う方が、聴衆に対し、より強い説得力を発揮します。
この共演者は必ずしも同意見の人物である必要はありません。他の意見の持ち主であれば、それは自社の利益だけでなく、業界全体にとって利益があることであるという説得力を発揮します。また、反対意見の持ち主であれば、意見が対立するその背景にある論点を明らかにしてくれ、聴衆にとって理解を高めてくれる効果があります。
賛成者であれ反対者であれ、共演者としてプレゼンテーションに巻き込むことで、聴衆の理解を高めることが可能となります。
状況を楽しめ
自社の実績や他社との比較などのメッセージは、時には意に反してプレゼンテーションで聴衆の反発を買うこともあります。こうした時、孫社長は聴衆から受け入れてもらえるためにジョークなどで包む方法も取り入れています。
愛嬌がコミュニケーションの大きな力になる
孫社長は「愛嬌がコミュニケーションの大きな力になる」ということを熟知しており、また自分が置かれている状況を楽しみ笑うことはコミュニケーションを円滑に進めるために非常に有効な方法であることをよく知っていたのです。孫社長は意外にも自らの頭髪に触れ、冗談を絡めることで反対意見をジョークで包むこともありました。
質問を恐れるな
孫社長は基本的に、株主総会の場で他の取締役や幹部に質問に対する回答を任せることありません。なぜなら彼は一般的な株主総会の運営手法に疑問を持ち、開かれた株主総会を目指したからです。
孫社長は、質疑応答こそが、プレゼンテーションの理解度を高めると考えていました。このため、誰もが避けたがるこうした役目を自ら買って出たのです。
質問を受ける際にはまず、質問の内容を自分の言葉でまとめて質問者に確認することが大切です。またこれらの厳しい質問にも速やかに回答するためには、プレゼンテーションの背後にある因果関係や様々な論理について考え抜いておくことが必要です。
行列や手段は市場の起爆剤となる最強のプレゼンテーションだ!
孫社長は製品を市場に投入された後、一部の新しいもの好きの層だけでなく、市場全体に一気に広げていくためには「行列」と「集団」であると考えていました。当然それらは自然発生を期待するのではなく、意図的に「行列」と「集団」を作り出します。
こうすることで、次の新しいものが良いものであることを確認した後に購入に乗り出す次の大衆層に一気に拡大させることに成功します。
プレゼンテーションの切れ味を決める
孫社長は数字を誰もがわかる見やすいグラフに変えて、その数字の意味を誰もが分かる例や比較で説明しています。このことによってプレゼンテーションの持つ説得力が飛躍的に向上します。
プレゼンテーションのメッセージに合うように数字はわかりやすく加工しなければなりません。時系列や他社比較、具体的な尺度を用いることで聴衆にとってわかりやすい形にすることがポイントとなります。
世の中の声を集めて世の中を動かす
「ビジネスは不平、不満、不便といった“不”から生まれる」と言います。孫社長もこのあたりのことはしっかり認識されており、世の中の不平、不満、不便と言った、あらゆる声に耳を傾けることに注意を払いました。
そして、自分たちのビジネスはそれらを解決していくものであるとプレゼンテーションの場で聴衆に強く訴え続けました。そうした、世の中の“不”の解決へ向かう事業は、いつしか「志」となり、その「志」に共感した人たちが、提携を承諾し、商品を購購入し、資金を拠出し「同志」となります。
これもプレゼンテーションの効果を劇的に高めるために外せないポイントと言えるでしょう。
競合企業ですら同志だ
「志」とはビジョンをその時代背景や社会情勢などから掘り下げてそれほど遠くない未来に実現すべき目標として具体的に示したものです。この「志」の達成という観点に立てば競合他社ですら「同志」と言えます。
自社の利益を守っていくことは会社である以上当然重要ですが複数の企業が競争して切磋琢磨していくほうがより速く「志」が達成できます。
プレゼンテーションを作る過程もインタラクティブ(双方向)に
プレゼンテーション案を練る過程で Twitter のフォロワーなどから意見を集めることはプレゼンテーションの説得力を高める上で重要と言えます。
またその案を作成する際、社内の様々な人を巻き込みそれらの意見を集約して作ることでそのプレゼンテーションは多くの人々の共有物へと変化して行きます。
独り善がりのプレゼンテーションは所詮一方通行の作品です。多くの人々からの意見を集め、そのプロセスを経て完成したプレゼンテーションには、より深い説得力と、多くの人々の気持ちと温もりが感じられる内容にグレードアップします。
まとめ
今回はプレゼンテーションにおける具体的なテクニックについて10個ほどご紹介させていただきました。 私、三木雄信は孫社長のもとで学んだ、こうしたノウハウを活用しコーチング式英会話トライズ(TORAIZ)を立ち上げ、現在もその手法を用いています。もっと具体的に知りたい方は私、三木雄信の著書「 孫正義奇跡のプレゼン〜人を動かす23の法則〜 」で紹介させていただいておりますので、そちらも合わせてご参照下さい。
次回はプレゼンテーションの成功を左右する4つの準備について紹介させていただきますので、どうぞお楽しみに!