「業務の問題点がどこにあるのか見出せない」
「担当者によって業務成績がまちまちで困っている」
このような悩みをお持ちのビジネスパーソンも少なくありません。
私、三木雄信は10年以上前にソフトバンクの孫正義社長の社長室で働き、現在はコーチング英会話トライズを経営しています。孫社長は以前から一貫して「数値化して根拠を示せ」と部下に語っていました。客観的な根拠を示すために「数値化」が重要であることを認識している人は多いと思いますが、適切に数値化できている人は限られています。そこで孫社長から学んだスキルを、著書【孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術】として公開しました。
本記事では、その中から「数値化仕事術」を活用するうえで理解しておきたい7つのポイントをご紹介します。
目次
数字は与えられるものではなく、取りに行くもの
数値化の重要性をビジネスパーソンに解くと「数値化ならすでにやっています。何しろ会議のたびに会社から膨大なデータを渡されますからね」という答えが返ってきます。
しかし、与えられたデータはすでにある種の意図を持って分類されていることが多く、あなたの問題解決に役立つとは限りません。生データを得たとしても集計方法や項目といった前提が問題解決と合致しているかどうかという問題もあります。
つまり、第一に気をつけるべき点は、「自分の業務に必要なデータは、集計から解析まで自分で手を動かして調べるというマインドが必要」ということです。
数値化の目的はどう改善につなげるか
数値化の目的は過去の結果を分析し、「次はどうするか」の意思決定の判断材料にすることです。したがって、未来のアクションにつながらない数値化には意味がないのです。
孫社長は言い方こそ厳しいですが、たとえ現時点での数字が悪くても、その数字に基づいて適切なアクションを提示できる部下はきちんと評価します。むしろ報告した数字が順調でも、「次はどうするか」を問われてすぐに答えられず、「検討します」などとお茶を濁そうとする部下には容赦ありません。数値化は過去を振り返って満足するためのものでも、誰かを悪者にするためでもなく、未来を作るためのものであることをぜひ肝に銘じてください。
数値化のファーストステップは「分ける」こと
数値は分けることで初めて意味を持ちます。その例が「工場での生産性」と「営業の生産性」でしょう。日本では戦後、生産ラインの効率化のために、工場ではそれぞれのステップごとにどのくらいの時間がかかるかを計測し、律速段階を改良したり、歩留まりを良くする施策がなされてきました。
一方、営業ではどうでしょうか?多くの営業マンが「毎月の目標を達成できない」という最終結果にだけ目を向けて、頭を悩ませていることがほとんどです。しかし、営業のように属人的と思われるスキルにもプロセスが存在します。例えば、「露出」「問い合わせ」「商品情報の提供」「契約情報の提供」「契約」のように段階を分けることができます。過去の営業結果のデータを取ることで、これらのプロセスのどこで離脱されているのかを明らかにすることができます。
ビジネスも科学と同じように仮説を検証することが大切です。そのために、質的なものを数値に落とし込む工夫をしていきましょう。
問題のありかが見えてきただ、さらに細かく分ける
単にプロセスに分けただけでは改善点まで到達しないことも多々あります。その際には、問題のあるプロセスをさらに細かく要素分けしてみましょう。
例えば1度目の分類で、生産性のばらつきが大きいとわかったとします。そこで生産性を曜日別に求めてみたところ、「月・火は生産性が高いが、木・金は低い」というようなデータが得られたとします。すると「秋の後半には従業員の疲れがたまってくるのではないか」という仮説を立てることができ、改善のためにシフトの調整を行うことができるようになります。
数値化のゴールは現在の問題を数式で表すこと
あなたはビジネスにおける再現性をどのくらい意識していますか?再現性とは「誰が施策を打っても同じように結果が出せること」を意味します。再現性の高い仕事をする理由は、当てずっぽうではない予測をするためです。
私たちの仕事では、「Yahoo!BB」がどれだけの契約を取ることができたかという目標を左右する要素の重要度を、重回帰分析によって高い精度で調べることに成功しました。例えば要素に「売り場面積」「パラソル前の道の通行料」「アルバイトの人数・熟練度」「駅からの距離」「天気」「曜日や時間帯」をとって数式化しました。
その結果、「1時間あたりの交通量が1000人以上の場所での出店は現在10箇所だが、これを20箇所に増やせば顧客獲得コストが25%低下する」といった予測値が一発で分かるようになりました。このように種々の分析手法によって問題を関数にできれば、結果を最大化するために必要な処理が明らかとなります。
数値化したらPDCAを回し、数値を改善する
次は明らかになった問題点をクリアするための施策を打ちます。ここまで分析してようやく仮説検証をすることができます。基本的には「改善策に取り組む」→「結果を得る」→「再度問題点を明らかにする」→「改善策に取り組む」というループを繰り返しながら進めていきます。
このPDCAサイクルを回す際にも孫社長流のポイントがあります。それは「小さく初めて、早めに失敗する」ということです。PDCAと言われると「よく練ったプランを満を持して実行する」というイメージが強いですが、大きく失敗すると軌道修正がしにくいというデメリットがあります。そのため、小規模で実験的に実行し、その結果を見ながら徐々にスケールアップをするというのがビジネスの実情には合っています。
また、大きく実行することには精神的なデメリットもあります。計画に時間をかければかけるほど、社内は疲弊してモチベーションが下がるもの。いくら計画を練っても、実行に移さなければ「やった、成功した!」という達成感や充実感を得られないのだから当然です。
問題解決後も数字でモニタリングし続ける
数値化によって問題を解決しても、そこが最終のゴールではありません。ビジネス環境は刻一刻と変化するので、一旦成功したやり方も、時間が過ぎればベストな方法とは言えなくなってしまいます。数字を日々チェックしていれば「今までほぼ一致していた予測値と実測値の間が急にずれるようになった」といった変化を発見することができます。
過去のやり方に固執したことで衰退した企業は、枚挙にいとまがありません。2010年ごろまでは、インターネットへの接続はPCからがほぼ全てでした。そのため、モバイルブラウザに対応したページを作っている企業は限られていました。
しかし、スマホの普及により、インターネットへのアクセスの多くがモバイルからに変わると、その対応に遅れた企業は顧客を失うことになりました。これらの企業のようにならないためにも、数字をモニタリングし、問題が発生した場合には柔軟に対応できる体制を準備しましょう。
まとめ
本記事では数値化をビジネスに活用するための具体的な手順についてご紹介しました。数値化を成功させることで市場の変化に合わせて、最も有効な施策の決定ができるようになるので、ぜひ皆さんのビジネスにも取り入れてみてください。
特にこれまでの”経験”に自信のある40代、50代のビジネスパーソンこそ、数値化を取り入れることでさらに説得力のある打ち手を選択できるようになるでしょう。実際に私も数値化仕事術を実践することによって、コーチング英会話トライズの経営をあっという間に軌道に乗せることに成功しました。より詳しい情報を著書【孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術】で公開していますので、そちらも合わせてご参照ください。