「いつも仕事をやっているのに、どんどん新しい仕事が降ってきて片つかない」
「残業が多くてプライベートを楽しめていない」
そんな悩みをお持ちのビジネスパーソンは少なくありません。
私、三木雄信もかつては仕事を溜めてしまい、会社の仲間や取引先に多くの迷惑をかけてきました。しかし、ソフトバンクの孫社長の秘書室で働いていた頃、優秀な方々の仕事ぶりから多くのことを学び、仕事を効率的に進める術を身につけることができました。そのおかげで現在ではコーチング英会話「トライズ」を始め、複数の企業の経営を推進しています。
これらの手法をより多くの人に活用してもらうために、2016年に著書「頭のいい人の仕事が早くなる技術」を上梓しました。本記事ではその中から「締め切りに遅れないための習慣」「枯れないアイディアの作り方」「仕事を加速させるコミュニケーション」をご紹介します。
締め切りに遅れないための習慣づくり
締め切りに遅れてしまう人を観察していると、必ずしも彼らがその仕事に時間をかけ過ぎている訳ではないことに気づきました。例えば、3時間で終わる仕事を頼まれた場合、締め切りを守る人も遅れてしまう人も、同じように3時間かかっています。
ただ異なるのは「取りかかるタイミング」です。締め切りに遅れることが習慣化してしまっている人は、その仕事にどの程度の時間を要するかを見積もることができずに、締め切りの2時間前から始めたりしてしまうのです。
仕事を頼まれた直後であれば素朴な質問もしやすいので、いくつか質問をしながら、まずは全体を見通すことを心がけましょう。その上で80%の出来でざっと大枠を作り、一度アウトプットするよう心がけましょう。もしその段階で修正が必要になれば短期間での方向転換もできますし、何より依頼者に「ちゃんと進んでいる」と安心感を与えることができます。
また、締め切りに間に合わない人の中には、その依頼よりも前に頼まれたことが残っているため「予約待ち」の状態になっている方も少なくありません。すると同じ時間をかけて仕事をするのに、依頼者の元へ届くまでには大きな時間差が生まれ、満足度にも影響します。
このような状況を避けるためにも、来た依頼をおいて置かずに、その日のうちに消化するよう心がけましょう。
引き受けた仕事が「スピード重視なのか」「質重視なのか」をよく考えることで、最小の労力で最高の満足度を実現させることができます。時間というリソースに限りがある状況ではこと考え方は非常に重要です。
想像力は不要!? 論理性はアイディアの源泉になる
「今までにないものを想像する」
そう聞くと、アウトプットまでにとてつもない時間がかかりそうで、一部の天才にしかできないように思えます。ところが、これを簡単かつスピーディーにやり遂げる方法があるのです。
それが「掛け算法」です。すでに世の中にあるビジネスや商品、サービスなどを組み合わせて、新しいものを生み出す手法です。例えば、私の会社が提供しているコーチング英会話「トライズ」は「英語」×「マンツーマンのトレーニングジム」の掛け合わせです。
従来から自社で手がけていた英会話教室などのサービスと、「結果にコミット」というキャッチコピーで人気を集めているダイエットジムの手法を掛け算した結果、「1年で必ず英語がマスターできるプログラム」が誕生しました。
同様に、孫社長も大学生の頃、「シンセサイザー」と「辞書」を組み合わせて音声翻訳機のアイディアを出し、それを周囲の研究者と共作し、特許収入を得ています。
ビジネスの世界で求められるのは、ゼロからイチを生み出すことではありません。そんなことをしなくても、既存のものを掛け合わせれば、新しい価値を生み出すことは十分に可能なのです。
アイディアを論理的に生み出す別の例として、「構造化」も重要です。これは1つの事柄について「大項目」「中項目」「小項目」のように階層立てて思考することで、もれなくダブりない検討を可能にする手法です。
私はこれで経営に関する1万の要素を3日間で出すことができました。
フィッシュボーンチャート
また、この手法は問題解決の文脈では「フィッシュボーンチャート」という3層構造のフォーマットでも知られています。ある一つの問題の解決法を考える上で、大まかなアプローチを「大骨」とします。さらにその大骨を達成するためのアイディアを「中骨」、中骨を達成するためのステップを「小骨」とすることで、実現可能なアクションにまで落とし込むことができます。最初に選択肢を全て出し切ることができるので、インパクトの高いものから取り組めるというのも大きな利点です。
コミュニケーションで人的資本を活用する
専門化が進む現代人の仕事の多くは、他者とのコミュニケーションを前提にしているため、コミュニケーションの速さそのものが仕事の速さを決めると言っても過言ではありません。そのため、「結論から話す」「メールに挨拶は不要、一行で書く」と言った効率重視な手法を身につけることで、あなたの生産性は大きく変わることでしょう。
それに加えて、自分が仕事をするときも部下に仕事を依頼するときにも覚えておくことがあります。それは「情報」と「権限」が十分かを確認することです。仕事に取り掛かって何かにつまずく場合は、それを判断するだけの情報か、手元にある情報から意思決定をする際の権限のいずれか、もしくは両方が欠けています。
例えば部下にあるセレモニーの準備を頼んだのに、それが遅々として進まない原因は、経費の承認が下りないからかもしれません。その場合の上司役割は事前に根回しをし、スムーズに事務作業が遂行するよう手配することかもしれません。
孫社長の社員との議論の仕方
また、コミュニケーションが仕事の質を上げる例は他にもあります。孫社長は部下との壁打ちを効率的に使って、思索を深めていました。壁打ちとは、今抱えている課題について「これってどうだろう」「こんなやり方もあるよね」などと私たちを相手に議論を始めるのです。
議論と言っても、突然呼び出されることも多かったので、その課題について確たる意見やアイディアを持っていた訳ではありません。ですから、「一般的に考えると厳しいんじゃないですか」「それなら似たような事例を他社がやっていましたよ」などと、手持ちの情報や世間一般の価値観を返していくしかありません。
しかし、それこそが孫社長の求めていたものでした。球を投げたら返ってくる。それ自体に大きな意味があるのです。私たちから独創的なアイディアを返す必要はなく、批判に対峙して、自分の中にある思考の壁を打破することが壁打ちの目的だったのでしょう。
まとめ
仕事を溜めないためには、全体像を把握し、完了までにどのくらいの時間が必要かの算段をつけておくことが非常に大切です。さらには依頼がきた時点で少し手をつけてしまい、80%程度のできにすぐに持っていきましょう。
ビジネスに関わらず、アイディアは組み合わせから生まれます。既存のものを結びつける癖をつけておくだけでも、いざという時に面白い意見が出せるはずです。さらには、構造化することで体系だったアイディア出しも可能になります。人との関わりからアイディアを深めることもできるので、タネを見つけたら周りの人と意見交換をして、批判に耐えうる改善策を考えてみましょう。
私はこれらの手法を活用して、コーチング英会話トライズの経営を成長させることができています。より詳しい内容は「頭のいい人の仕事が早くなる技術」を参考にして、是非皆さんの仕事も効率化してみてください。