【資料作成術】プレゼンテーション資料と企画書の特徴と注意点

ビジネス術

「印象に残るプレゼンテーション資料づくりができない…」 

「フォーマット通りに作った企画書がどうにもわかりにくい…」 

このような悩みをお持ちの方は少なくありません。これまで4回に渡って、私、三木雄信がソフトバンク時代に学んだ「伝わる資料作成の方法」について解説をしてきました。 

私は伝わる資料作成術を活用し、現在ではコーチング英会話トライズの経営を成功させることに成功しています。そのノウハウを世に広めるために、2015年に著書世界のトップを10秒で納得させる資料の法則を上梓しました。 

最終パートとなる第5回では、プレゼンテーションと企画書で求められる情報の違いに焦点を当て、これら2つの資料を作成する際に注意すべき点を解説します。 

プレゼンテーション資料と企画書の根本的な違いとは 

まず押さえてきたいのが、プレゼンテーション資料と企画書との違いです。この2つは主役が全く違います。 

プレゼンテーションの主役はあくまでも「話し手」です。パワーポイントやキーノートで作成したスライド資料はサブであり、主役を引き立てる脇役に過ぎません。特に昨今では、画像1枚からなるスライドや、キーワードだけを大きく映したスライドが主流になり、スライドだけを見てもプレゼンの内容全てをカバーできるわけではありません。 

一方、企画書の主役は人ではなく、「企画書そのもの」です。読む相手が限定され、プレゼンテーションのように不特定多数を対象とはしていません。そのため、作った本人の手を離れて、企画書が独り歩きすることも多いです。むしろ、企画書が独り歩きし、作り手がそばにいなくても内容がよく分かるように作ってあります。 

さらには資料と読み手との距離も大きく異なります。プレゼンテーションでは何メートルかの距離を置いて見るように設計されているので、情報を詰め過ぎず、一瞬で言いたいことがわかるように設計されます。反対に企画書は、手元でじっくりと読み込むことを前提に作られているため、プレゼンテーション資料よりもずっと文字数が多くても問題ありません。 

プレゼンテーション資料の鉄則 

次に、プレゼンテーション資料をより魅力的に見せるコツについて見ていきましょう。大原則としてはできる限りシンプルなスライドにすることです。プレゼンテーションの場では事前に資料が配られることも多いため、情報を詰め込み過ぎたスライドだと、聴衆に「詳しい数字はまた帰ってから見よう」と思われ、あまり意識を向けてもらえません。また、スライドを読み上げるだけのプレゼンテーションも退屈極まりないので、必ず話し手の発する言葉が意識の中心に来るようなシンプルなスライドを使用します。 

例えば、図表9-1のスライドを見たとき、あなたはどのように感じますか? 

(本書より引用) 

3つのグラフがあって具体性が高いように思えますが、パッと見たときに何を言いたいスライドなのかが理解できません。実はこのスライドで最も訴えたいのは、ダイエット市場が有望であるという点だったのですが、それはグラフにおいても文章においても登場するのが最後の最後です。本来のメッセージの周りにある情報があまりにも多すぎるため、中核のメッセージがぼやけてしまっています。 

そこで、「ワンスライド・ワンメッセージ」の原則に立ち返って、キーポイントを強調したスライドが図表9-3になります。 

(本書より引用) 

伝えたいことが「市場が2兆円を突破」であるならば、それを端的に表すグラフをたった1つ付けるだけで十分です。短い時間内に聴衆に興味を持ってもらいたいなら、イメージ処理を担当する右脳にアピールするために、グラフを大きく見せる工夫をしてみましょう。 

スライドに書く文字数にも注意が必要です。目安としては20文字前後。聴衆がスライドを一目で見て理解するには、この文字数がマックスだと考えておく必要があります。 

さらにグラフ上の矢印のように、注目してほしい傾向をハイライトすることも効果的です。それによって、各目盛りを読んで数値を追うことをやめ、「全体的な成長に注目すればいいんだな」と聴衆に伝えることができます。 

企画書の鉄則 

企画書といえば、図表10-1のような固い文書を想像する方が多いかもしれません。しかし、上から順番に読んでいってもイマイチ要点がわからず、本来この企画書で提案すべき新プロジェクトの概要は最後に来ています。書いてあることはどれも真っ当なものですが、これでは忙しい上層部に興味を持ってもらうことは難しいでしょう。 

(本書より引用) 

人の心に響かない企画書は、タイトルの表示方法が不適切なことが知られています。タイトルが小さく表示された企画書では相手の目を引くことができず、何について書いた企画書なのかがよく理解されないまま読み進められてしまいます。 

次に、良い企画書の例である図表10-2を見てみましょう。 

(本書より引用) 

こちらの企画書では、まず新プロジェクトの名称である「糖質0米」が目に飛び込んできます。さらに「What」「Why」に答える形で項目が設定されているので論理の飛躍がなく、主張に説得力が生まれます。また、グラフ中の注目すべき数字が大きく表示され、数字にインパクトがあります。さらに文字が並んだ部分でもキーワードが強調されており、キーワードだけを読んで要点がつかめるようになっています。 

企画書の体裁以外にも、「これを知っておくと差がつく」というポイントがあります。それは「評価がない資料は資料ではない」ということです。どんなによくできた企画書でも、ただ読み上げるだけでは意味がありません。必ず自分の評価が含まれるようにしましょう。

図表10-2の企画書でいえば、「この資料を見て私たちは、各世代ともに50%以上が体重のコントロールをしているということから、今後、ダイエット市場は非常に有望だと考えました」と説明できるのが理想ですが、評価を述べず「20代は◯%、30代は◯ %、40代は◯%、50代は◯%、60代は◯%であり、全ての世代で体重コントロールしている人の割合は50%以上に及んでいました」とだけ読み上げるのでは、企画書の説明としは失格です。それは単なる市場規模の調査にすぎません。

以前の記事(記事3のリンクを挿入)でも述べましたが、何らかのアクションにつながる資料を作るという意識を常に持っておく必要があります。そこには「評価」が存在し、意識的にしろ、無意識的にしろ、資料を通して読み手にメッセージを発しているのです。 

まとめ

プレゼンテーション資料企画書では、伝えられることが大きく異なります。それらは資料との距離感や主役の違いから来るものであり、両方の性質を知った上で強みを生かす必要があります。

おさらいをすると、プレゼンテーション資料では「できる限りシンプルなレイアウトにし、核となるアイディアを強調すること」が重要です。一方、企画書では「キャッチーなタイトルを用意し、5W1Hに基づいて論を展開し、キーワードを強調すること」で格段に見やすくなります。今回の記事では2つの資料のbeforeとafterをお示ししているので、その効果が良くお分かりいただけたかと思います。ぜひ、これらのポイントを取り入れて、資料の質を高めてみてください。 

実際に私もソフトバンク式の資料作成術をマスターしたことで、様々な場で影響力の大きい発表ができるようになりました。さらにはコーチング英会話トライズ(TORAIZ)の経営にもその手法を応用しています。資料づくりのさらなるコツは著書世界のトップを10秒で納得させる資料の法則で紹介していますので、そちらも合わせてご覧ください。