数字に強い人は知っている、仕事の成果を激変させる7つの理論と法則

英会話 トライズ 三木雄信 ビジネス術

「ビジネスを成功させるために過去の研究から学べることはないだろうか」 

「体系だったビジネスの理論はないだろうか」 

そのような疑問をお持ちの方は少なくありません。 

私、三木雄信はソフトバンク社長室で、孫社長の右腕として活躍したのち、コーチング英会話トライズの経営者として、多数の校舎の経営改善に成功してきました。そこでは「適切な数値化」を徹底しており、再現性の高い方法で結果を出しています。孫社長から学んだ数値化の技術をぎゅっと1冊にまとめ、著書【孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術】として2017年に上梓しました。 

その中から本記事では、「仕事の成果を激変させる7つの理論と法則」に焦点を当て、科学研究などのエビデンスをもとに、ビジネスの成果を改善するための方法をご紹介します。 

大数の法則と期待値 

私はよく若い人からキャリアや進路についての相談を受けます。その中でも多いのが、「起業すべきかどうかで悩んでいる」というものです。そんな時、私は決まって「大数の法則と期待値」について話します。大数の法則とは「試行の回数を増やせば増やすほど、その物事が起こる確率は理論値に近づいていく」というものです。

例えばサイコロの目の出やすさは1から6の目まですべで同じですが、2, 3回振っただけだと「5が3回連続で出る」ように、理論値とは異なる挙動も起こります。しかし、これを100回, 200回と増やせば、ほぼ均等に1/6ずつの確率になっていくでしょう。

期待値

次に期待値とは、1回の試行で見込める結果のことで、「確率」「値」の積から求められます。 

起業すべきかどうかを金銭的な面で評価するのであれば、期待値を計算してみると分かります。年間に登記される企業数を20万件、年間に上場する企業数を80件、上場時の企業評価額を100億円と仮定します。オーナー社長は51%程度の株式を保有していることが多いので、当たりの目が出る(つまり、上場まで会社を成長させることができる)と、51億円を受け取ることになります。この時の期待値は、 

51億 × 1/2500(年間登記企業数/年間上場企業数) ≒ 200万 

驚くべきことに、起業した場合には200万円程度の資産しか手に入れられない計算になります。民間企業に勤めた場合の一年分の給料にも及びません。 

では、起業を諦めて就職するしかないのかと言えば、そうではありません。期待値を知ることは、あくまで「一般的なやり方をしていたら、こうなりますよ」というシナリオを確認する作業に過ぎません。ここで重要なのは、他の人が普通のサイコロを振る中で、「当たりの目の出やすいサイコロ」を振ることです。孫社長はIT分野という成長ドメインに狙いを定め、事業展開をしています。自分のいる市場そのものが成長していればそれだけ当たりが出やすくなるということです。 

鮭の卵理論 

鮭は一回の産卵で2000から4000個の卵を産みますが、成長して川に戻ってくるのはわずか2匹だけと言われています。このように、生き物の世界では多産多死が1つの戦略として用いられています。ベンチャー投資や事業開発もこれと同じで、低コストで試行の回数を増やすことで、本当に良い企業だけを成長させることができます。その企業からの利益だけで元の全試行分の費用を回収できれば、分散戦略は成功したと言えるでしょう。 

孫社長は1回当たりの試行コストを下げるために、ジョイントベンチャーを作ることを好みます。複数の会社が出資するのでソフトバンクが出す資金は最低限で済みます。また、当時は合弁の相手を「アメリカで株式公開している、時価総額3000億円以上のIT企業」に限定していたため、投資された企業には箔がつき、より成功の確率を上げることにつながりました。 

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72の法則 

72の法則とは、「複利の力を侮るべからず」ということを指しています。一般的に、企業の成長や従業員の給与上昇率は、それがどの業界にいるかでおおよそ決まってしまいます。それを評価する指標が「業界成長率」です。IoT分野であれば年15%の成長率、新聞業界であれば年マイナス2%の成長率です。

これがどのくらいの差をもたらすかを考えるために、5年後の経済規模を考えてみましょう。IoT分野は5年で市場規模が2倍に、新聞業界は5年で市場規模が90%まで縮小します。このように、単利で見れば小さなマイナスも、複利の考え方に基づいて10年や20年の長期的なスパンで見ると、実は想像以上に大きなマイナスになるのです。 

「そこまで正確に計算しなくても、とりあえず自分の業界について大まかな将来を予測したい」というのであれば、便利な計算方法があります。それが「72の法則」です。これを使えば、「現在の売り上げが2倍になるまでに何年かかるか」がすぐに計算できます。

やり方はシンプルで、「72を成長率で割る」。これだけです。例えば年8%で成長している会社なら、

72 ÷ 8 = 9(年) 

つまり、売り上げが2倍になるまでに9年かかることが分かります。このようにざっと計算をして、ある成長率がどの程度のインパクトを与えるのかを直感的に把握しておくのは様々な場面で役に立ちます。 

限界効用逓減の法則 

焼肉の食べ放題をした時に、最初は「うまい!」と感動しても、お腹がいっぱいになるにつれて「もう見るのもイヤ…」と思うくらいに飽きてしまった経験はありませんか? 

これが「限界効用逓減の法則」です。経済学の定義では「量が増えるごとに、1単位当たりの効果が減っていく」ことを指します。 

英会話 トライズ 三木雄信
(本書【孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術】より引用) 

ビジネスの現場では「Web広告の効果」や「ある委託企業へ外注した際のアウトプットの質」などでこの現象が見られます。よって、仕事において「量を増やしたのになぜか上手くいかない」という場合には、限界効用逓減の法則を思い出してください。 

ダンバー数 

先ほどの限界効用逓減の法則は、数が増えるほどに1単位当たりの効果が減少するというものでした。一方、数が一定水準を超えると、効果がむしろマイナスに転じるという「規模の不経済」が働く場合もあります。例えばベンチャー企業では「社員300人が1つの壁」とよく言われます。これは300人を超えた途端にマネジメントが難しくなるからです。 

これは単なる経験則ではなく、科学的にも裏付けされています。その理論が「ダンバー数」です。英国の人類学者ロビン・ダンバー氏が提唱した概念で、「安定した集団を維持できる個体数には上限がある」というものです。ダンバー氏の研究によると、安定した集団を維持できる数は、人間の場合では100人から230人の間とのことです。 

ダンバー数を知るとビジネスのどんな場面で役立つのでしょうか。それは「大勢の人が働く職場で、組織がうまく回らないとき」です。ダンバー数を理解することで組織の指揮系統を見直し、1つの集団の中の人数をコントロールして効率化を計ることができます。 

英会話 トライズ 三木雄信

マジックナンバー

ダンバー数に基づいて、集団の人数を150人や200人以下に抑えたとしても、この人数を1人のマネージャーが直接管理することは不可能です。では、1人のマネージャーがきちんと面倒を見られる上限は何人か。それは7人です。アメリカの認知科学者であるジョージ・ミラー氏の研究によると、「人間が短期的に記憶できる容量は7つ前後」とのことです。7つ以上のタスクを並行して処理することが難しいということに加え、経験的にも部下の数も7人以下にした方がフォローアップの精度が上がると考えています。

 

イノベーター理論とキャズム理論 

イノベーター理論はスタンフォード大学の社会学者であるエベレット・ロジャース氏が提唱した理論で、商品の購入態度によって消費者を次の5つに分類しています。 

イノベーター 

新しい物を進んで採用する人。市場全体の2.5%を構成。 

アーリーアダプター 

流行に敏感で、自ら情報収拾を行い判断する人。オピニオンリーダーとなり、他の消費者層に大きな影響力を発揮する。市場全体の13.5%を構成 

アーリーマジョリティ 

新しい物の採用に比較的慎重な人。市場全体の34%を構成。 

レイトマジョリティ 

新しい物の採用に懐疑的で、周囲の大多数が試しているのを見てから同じ選択をする。市場全体の34%を構成。 

ラガード 

最も保守的な人。世の中の動きに関心が薄く、流行が一般化するまで採用しない。市場全体の16%を構成。 

このように5つに分けた上で、ロジャース氏は「普及率16%の論理」を提唱しています。これは「イノベーターとアーリーアダプターを合わせた16%のラインが、それ以降の層に広がるかどうかの分岐点になる。16%を超えると、それ以降は急速に普及していく」というものです。つまり、一般の消費財においては「流行に敏感な16%の層を購買まで持っていけば、あとは自然と浸透していく」ことを意味しています。 

これに対し、ハイテク産業の場合には例外的にイノベーター理論が適用できないという意見もあります。米国のマーケティングコンサルタントであるジェフリー・ムーア氏が提唱したのが「キャズム理論」です。これは、上記の5分類のうち、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には簡単には超えられない深い溝があるという理論です。 

(本書【孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術】より引用) 

したがって、スマホやPCを対象した業界ではアーリーマジョリティに向けた訴求まで行って初めて流行の波を作り出せるということを意味しています。皆さんの分野がどちらの理論に従うのかを意識した上でマーケティングを行うことで、過去の研究に基づいた無駄のない施策が可能になります。 

まとめ 

ビジネスの場面では様々な数学の規則、科学理論、マーケティング手法を活用することができます。本記事ではコーチング英会話トライズ(TORAIZ)の経営にも活用している7つの法則をご紹介しました。

これらを使うことで勘に頼らない、数値化仕事術が可能になります。実際に私もこれらのスキル習得したことによって、コーチング英会話トライズ (TORAIZ) を短期間で成長させることができました。より詳細な内容は著書【孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術】で公開しています。合わせてご覧いただくことでさらに理解が深まると思います。 

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孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術