【資料作成術】現状の問題を読み解ける3つのグラフ

ビジネス術

「問題解決のための手法を知りたいけど、何から始めていいか分からない」 

「数字で根拠を示して、上司に提言したい」 

多くのビジネスパーソンが似たような悩みを抱えています。 

私、三木雄信は孫正義社長の右腕として様々なプロジェクトに従事し、中でも「伝わる資料作成」を得意としてきました。この経験を生かしてコーチング英会話トライズの経営を軌道に乗せ、ソフトバンク流の資料作成術を組織全体に浸透させてきました。さらに多くの人にも活用していただきたいという思いから、2015年に著書世界のトップを10秒で納得させる資料の法則を上梓しました。 

本記事ではその中から資料を格段に分かりやすくする3つの図表(パレート図、回帰分析、プロセス分析シート)についてご紹介します。 

問題点の発見に役立つパレート図 

複数の問題があり、そのうちどこから着手すべきかを考えるときに活用したいのがパレート図です。パレート図とは棒グラフと折れ線グラフの複合図のことです。実際の例を見てみましょう。図表6-1は、私がYahoo!BBのコールセンターで働いていたときに寄せられたクレームを分類したパレート図です。 

(本書より引用) 

最も多い原因が異音、続いて時々断(注: 回線の専門用語で接続が途切れること)、通信速度遅延、温度上昇と続きます。 

件数と合わせて累積比率が読み取れるので、 

  • 異音だけで全体の約50% 
  • 異音から温度上昇までで約80% 

のように、「どの問題が全体の中で大きな割合を占めているか」が一目瞭然です。 

優先順位がわかれば、問題解決のためにもっと予算をつけようとか、人的な支援を増やそうといった解決策が立てやすいです。これがパレート図を作成する一番のメリットでしょう。 

このパレート図がないと現場はどうなるのでしょうか。現場では誰もが「いろいろな問題があるな」と認識はしています。しかし、分析ができていないとどこから手をつけていいのかが議論できず、どれも中途半端に終わる可能性があります。もっとひどいのは、声が大きな経営幹部がたまたま「ここに問題があるらしいぞ」といったりすることです。優先順位を考えずに対応を行うと、労力をかけた割にあまり効果がなかったということになりかねません。 

パレート図は、コールセンターのような業務の流れの川下の組織と、川上とのコミュニケーションを活発にする働きがあります。根拠を示した上で要望を出せば、上と下との会話が円滑化し、改善に向けて事態が動いていきます。多くの人が面倒くさがってやらない分析をきちんと行うことで、結果的には自分の業務負担を減らすことにもつながるでしょう。 

パレート図を作る際には「定義付け」を厳密に行うことが重要です。コールセンターの課題のように1つ1つの問題が明らかに違う際には「どの項目に関するクレームであったか」が分かりやすいですが、実際の問題の多くはもっと曖昧なものであることも少なくありません。一度分類定義を作って終わりではなく、しばらく時間が経ったら分類の見直しや、レポートを書く人が間違った項目に入れていないかをチェックし、運用までフォローしましょう。 

因果関係を明らかにする回帰分析 

ソフトバンクでは2001年に通信事業を始めた時から、孫社長が「これから回帰分析をしないやつの話は一切聞かない」と言い出して、社員はみな、徹底的に回帰分析をやらざるを得なくなりました。私も回帰分析のやり方をよく知らなかったので、「回帰分析ってどう作るんだっけ」という状態からスタートしました。実際はエクセルを使えば自動で計算してくれるので、原理さえ理解できていればそれほど難しくはありません。回帰分析手法を駆使したことが、ソフトバンク急成長の要因の1つだと感じています。 

回帰分析は「単回帰分析」「重回帰分析」に2分されます。 

単回帰分析

単回帰分析は比例関係のように、1つの変数(説明変数)が目的変数に与える影響を数式化したものです。実際の例では「気温からアイスクリームの売上を予測するとき」などに単回帰分析が活用できます。 

重回帰分析

重回帰分析では、複数の変数(説明変数)が目的変数にどの程度の影響を与えるかを数式化したものです。実際の例では「マンション価格の決定には、築年数、面積、駅からの距離のようにいくつかの要因が関係しており、それぞれがどのくらいマンション価格を左右するかを考える時」に重回帰分析が活用できます。 

出来上がった回帰分析を使えば、今後自分たちが携帯電話の契約獲得件数を増やそうというときに、計画を立てやすくなります。仮に獲得件数をあと5000件増やすことを目標に掲げたとします。回帰分析で得られた式に当てはめると「1000人の通行客がいる場所での普及活動をあと10件増やせばいい」といった、数値に基づいた判断ができるようになります。 

ただし注意しておくべき点もあります。回帰分析は集めたデータをもとに、それを説明する式を導出するので、集めたデータの精度が低いと予測通りにいかないことも出てきます。さらに、説明変数に適切なパラメーターを選択できなかった場合には「どの項目も説明変数に寄与しない」という結果が出てしまう可能性もあります。様々な項目を候補にしながらデータを蓄積していき、最後に回帰分析をしてみるのが確実でしょう。 

エクセルを活用した回帰分析の具体的な手順はいろいろなWebサイトでたくさん紹介されているので、そちらも合わせてご覧ください。 

律速を確認できるプロセス分析シート 

1つの仕事には必ず始まりと終わりがあります。スタート地点からゴールまでのどの段階で問題が起き、次の段階へどんな影響を与えているのか、その因果関係を探りだせば、問題解決にスムーズにつなげることが可能です。ここではプロセスを分解し、律速を発見するためのツールとして、プロセス分析シートをご紹介します。 

まずはモデルケースとして、ある健康食品の通販会社の営業成績を見てみましょう。この会社では電話営業に重点を置いており、ある時期に顧客に2万人の顧客に電話をかけました。この2万人は過去に無料サンプルを請求したものの、申し込みはしていないお客さんを対象にしています。その際に担当者が作ったダメな資料の例が図表8-1になります。 

(本書より引用) 

3つの業務内容に対していくらの費用がかかり、どの規模で実施したのかは書かれていますが、これをみただけではどのステップに問題があるのかは全く掴めません。そこでまずは電話をかけたタイミングから、実際の購入に到るまでのステップを細分化します。今回の健康食品は高額なので、クレジットカード会社の審査プロセスを経て購入されるという設定になっています。さらに、各ステップに到達できた件数を数え上げ、分かりやすいプロセス分析シートに生まれ変わったものが図表8-2です。 

(本書より引用) 

このように比較してみると、300万円のコストをかけて電話営業した2万件が、次のプロセスの「申込書送付」の段階では2000件まで減っていることがわかるはずです。この段階の歩留まり率が10%で、全体の中で最も低いため、まずは電話営業の仕方を変えるという施策を行うことができます。あるいは電話をかけた時間に問題があったのかもしれないという予測も立てられます。事実、調べてみると、この会社では電話営業の時間を午後6時までと限定していたため、夕方の忙しい時間帯に電話が集中していました。そこで、電話をかける時間を午後8時までに延長したところ、その後、歩留まり率の5%アップに成功しています。同じコール内容であったにも関わらず、夕食が済み、片付けも終わって、少しゆっくりするであろう時間帯にかけたほうがはるかに効果的だったのです。 

まとめ 

視覚に訴えかける図を作ることは、他の人に重要な箇所を伝える上でも効果を発揮しますが、自分自身が問題のありかを把握する上でも大切です。今回ご紹介した「パレート図」「回帰分析」「プロセス分析シート」はどれもビジネスの現場で重宝されている、非常に汎用性の高い手法です。目的や手元にあるデータに応じて、さまざまな分析手法を活用してみてください。 

私も実際にこれらの手法を駆使することで、多くの方にコーチング英会話トライズを利用していただけるようになりました。資料作りのより詳細な方法などは著書「世界のトップを10秒で納得させる資料の法則」にまとめていますので、そちらも合わせてご覧ください。 

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