日本人が英語を長期間にわたって勉強しても、話せるようにならないことには理由があります。
それは高校受験、 大学受験で根付いてしまった「当たり前の勉強法」から抜け出せないからです。実用的な英語能力には全く異なる考え方を持つ必要があります。
私、三木雄信は20代の頃にソフトバンクの孫正義社長の秘書としてのキャリアを歩み、その中で英語力を磨く必要に迫られました。その体験を元に、現在ではビジネスパーソンのための英会話スクール「コーチング英会話トライズ」を運営しています。
トライズの受講生の多くが冒頭の誤解に苦しみ、英語力を伸ばすことに苦労していましたが、英語運用力を伸ばすことに焦点を当てた学習によって、多くの生徒さんがビジネスで通用する英語力を身につけてきました。
それらの方法をまとめたのが著書「超高速PDCA英語術」です。
本記事では、その中から英語運用力が必要な理由や、TOEICと英語運用力の関係についてご紹介します。
日本人に欠けているのは「英語力」ではなく「英語運用力」
あなたが本記事を読み進めてくださったのは、英語力を身につけたいと望んでいるからでしょう。
しかし、実は日本人の多くはすでに十分な英語力を身につけています。
例えば、義務教育で学ぶ英単語は計3000語です。これは英検でいうと、3級と準2級の中間くらいの語彙レベルです。英検3級は「身近な英語を理解し、使用できることが求められる」、準2級は「日常生活に必要な英語を理解し、使用できることが求められる」と定められているので、その中間レベルの3000語を身につけていれば、基礎的な会話や読み書きは十分にできるということです。
ところが実際は、多くの人が英語を自由に使えずに悩みを抱えています。
それはなぜかといえば、今の時代に必要とされる「英語力」の定義が昔とは変わってきているからです。現在求められるのは、単語や文法を重視する英語力ではなく、英語を即時に使いこなす「英語運用力」です。
特にビジネスの現場では通信技術の発達に伴い、face to faceでのコミュニケーション機会が増大しています。日本国内にいる外国人と会議や商談をすることはもちろん、テレビ会議やスカイプを使えば、世界中の人と簡単にリアルタイムで会話できる時代になりました。
時代のニーズが変化したのであれば、英語の学習法も変えなければならない。まずはそのことを理解することが大切です。
英語学習は「1年」で必要十分
「英語をマスターするのにどのくらいの期間が必要ですか?」
このような質問をしばしば受けます。現時点での英語力や、目指す地点によるので一概には言えないのですが、日本人の平均的な英語力から、ネイティブと仕事でやり取りできるレベルに到達するにはおよそ1000時間が必要と考えています。
さらに、この1000時間を集中して1年間で行うことがポイントです。あまりに長い期間を設定してもモチベーションが続かないのと、1日あたりの学習量が少なくなり、効果が薄まってしまうからです。自身の経験を振り返っても、トライズの受講生を見ていても、社会人が英語をマスターするには短期集中が鉄則です。
後述するように、月に1回レベルチェックのテストを受ける場合、1年間であれば12回のセットを回すことができます。12回の試行錯誤(もちろんその期間内でも細かなPDCAを回します)を経験すれば、個人差はあれど目標に向けて大きく前進することでしょう。
1年で1000時間という目標設定は、1日に換算すると3時間であるため、生半可な努力では達成できません。厳しめの設定だからこそ本気度が増し、「必ずこの期間で身につけよう」と意識を高めることができます。
TOEIC850点の実力とは?
日本人が英語力を評価するためのテストとしてよく使われるものにTOEICがあります。最近では企業が採用や昇進、配属の基準としてTOEICのスコアを見るケースも増えました。
では、TOEICのスコアが高ければ、ビジネスの現場で問題なく英語を使いこなせるのでしょうか?
残念ながらそうとは言えないのが現状です。
先ほど話したように、現在のビジネスシーンで必要とされるのは、リアルタイムでネイティブとコミュニケーションできる能力です。となれば、当然スピーキング力が不可欠となります。
ところが、「TOEICのスコアは高いのに英語は話せない」というケースは少なくありません。TOEIC900点の人であっても、会話ができずに仕事にならないというのもよくあります。
それを裏付けるデータがVERSANTとの比較です。VERSANTは自動言語認識システムを用いてスピーキング力・リスニング力を評価するテストで、ネイティブが話す自然な速さの英語を理解し、応答できるかを診断します。在日アメリカ大使館の採用試験でも用いられているほど信頼性の高いツールです。
このVERSANTとTOEICのスコアの相関を調べた結果が次のようになります。
英語圏での仕事や日常生活に困らないレベルの英語を話すには、VERSANTのスコアで45点が目安になります。上記の結果を見ると、TOEIC850点の受験者のうち、約半数はVERSANT45点を下回っていることがわかります。
このデータを見れば、「TOEICのスコアが高ければスピーキング力も高い」という仮説は成り立たないことが明らかであり、TOEICで何点取れていても、スピーキング力は別途強化する必要があることがわかります。
PDCAのうち、CとAが抜けていたら英語は上達しない
仕事で成果を出すには、PDCAを回すことが必要です。目標達成のために計画をたて(Plan)、実行し(Do)、その結果を検証して(Check)改善する(Action)。このサイクルによって、目指すゴールへ到達することができます。
英語学習も全く同じです。学習計画を立て、勉強し、上達度をチェックしながら足りない部分は改善する。英語学習においては、多くの方がPlanやDoはできていますが、CheckとActionが不十分であるケースが散見されます。
その原因としては「自分がどれだけ会話できるようになったか」を客観的に検証することが難しいからではないでしょうか。しかし、自分の現在地を知らなければ、ゴールへ向かって正しい道を進むことはできません。もし目標に届かなければ「どうすれば達成できるか」を考え、自分なりに改善し、軌道修正をしながら道を見つけていくことが不可能なのです。
コーチング英会話トライズではCheckを補うために、上述のVERSANTを導入しています。それによってリスニング, スピーキング力を定量化できるため、「今月のやるべきことをこなせたorこなせていない」という曖昧な振り返りから脱却できるようになります。
また、ActionではVERSANTのスコアなどから、今何が必要なのかを分析し、翌月の学習プランに反映させます。学習を始めた時点でのプランから変更があっても良いので、「今の立ち位置」を起点に、目標までのロードマップを考えるようにしましょう。
まとめ
本記事の要点は次のようになります。
- 「英語力」と「英語運用力」は別物。受験でやったような「英語力をつける勉強法」ではビジネスに役立つとは限らないことを理解する
- 社会人の英語学習に必要な時間は1000時間。これを1年間で集中的に実行するのが「超高速PDCA英語術」
- これからの時代に必要なのは、即座に受け答えができるコミュニケーション力。単語と文法は最低限でも十分通用する。
- シンプルな英語でもネイティブと渡り合えるのは、ロジックが通っているから。
トライズでは、今回紹介した方法で1年間英語学習をしていただきます。忙しい社会人は短期間で英語を習得したい気持ちはわかりますが、短期間で英語を習得するのは難しいです。そのため、トライズのプログラムで1年間英語学習に取り組むことで、ビジネスの場で使える英語力を身につけることができます。ただ、プレゼンができるだけではなく、プレゼンの際の質疑応答やスモールトークなども英語でできるようになります。
気になった方は、ぜひトライズの無料カウンセリングにお越しください。公式サイトより、ご予約いただけます。
また、今回ご紹介した記事の内容は私の著書「高速PCDA英語術」に詳しく書かれております。よろしければ、お手にとっていただけますと幸いです。