前回までの記事では、プロマネの技術が必要となってくる時代の流れによる必然性、具体的なプロマネの進め方、想定外のトラブルに対するケーススタディ等について解説して参りました。
今回はこうしたプロマネのスキルを磨いた後に、新規事業を立ち上げる際の基本的な考え方について、私、三木雄信がソフトバンク時代に支えていた孫社長の例を参考に解説して参りたいと思います。
プロマネのスキルは新規事業のみならず起業にも活用できるノウハウが詰まっていますので、是非参考にしてみて下さい。それでは始めていきましょう。
目次
ソフトバンクと多くの日本企業の決定的な違い
孫社長の例を見る前に、まずソフトバンクと多くの日本企業の決定的な違いについてお話したいと思います。
結論から申しますと、日本の多くの企業は「計画→実行→検証→改善」のPDCAのサイクルを回すことでゴールを目指します。しかし、ソフトバンクのサイクルは、全く違う順番で回っています。
「たくさんの実行→数値化→理論化→計画」
このように真っ先に、「実行」がきます。しかも、一度にたくさん実行するのが特徴です。なぜなら、 不確実性の時代には、実際にやってみないと何が成功するかわからないからです。よって、失敗することを前提に、可能性のある方法や手段はどんどん実行します。
それらの結果を数字で計測して「数値化」したら、そのデータを検証して「理論化」し、最適解を見つけ出して「計画」を立てて、また実行する。
このサイクルを高速で回すのが、ソフトバンクのやり方です。
高度経済成長期のように環境が安定していた時代なら、方向転換や軌道修正なしに一つの計画を最後までやることができたかもしれません。しかし、ビジネスの環境がめまぐるしく変化する現代においては、計画通りにいかないことを最初から想定し、プランを動的に見直しながらゴールを目指すことが必要です。
固定費をかけずに始めよ
プロジェクトや新規事業、ひいては会社設立などの際は固定費を極限まで下げた方が断然有利になります。なぜなら事業が開始してしばらくは売上が立たないこともしばしばですが、オフィスの賃料、水道、光熱費、社員の給料などは当然のことながら、売上が立とうが立たまいが、初月から待ったなしで発生してきます。
こうした固定費を賄いつつ売上を立て、毎月安定的に利益を確保していくなどということは、至難の技と言わざるを得ません。固定費を下げることこそが、起業時の最大のリスクコントロールなのです。
会社が大きくなってからも、「固定費は下げろ」というのが孫社長の方針でした。なぜなら、会社の規模が大きくても小さくても、固定費を下げた方が利益を確保できるまでの売上高の額は少なくて済みますし、あるいは同じ売上高なら固定費が少ない方が多くの利益を確保できるからです。
私、三木雄信も教えを受けたので現在はトライズの本社機能を小さな雑居ビルに置いています。受講者に来てもらう各センターは、利便性と快適さを備えた良い物件を選んでいますが、私たちが働く場所は、何も高級なオフィスである必要はありません。
最初から潤沢な予算を与えて貰えるプロジェクトなどほとんどありませんから、初期費用はできる限り避けるのが基本と心得ましょう。
事業資金やアイデアは他人の力を借りる
「事業資金が貯まったら、新規事業を立ち上げたいと思っています。」
私、三木雄信のところに起業の相談に来られる方がいます。それに対する私の回答は
「お金を貯めている暇があったら、今すぐ事業プランをもっと練って、今すぐ始めなさい。」
です。
変化が激しい現代のビジネス環境において事業資金を貯めるために何年も費やしていたら、それこそ機を逸してしまいます。
最近では、アイデアや計画の段階で出資を決めるベンチャーキャピタルや、若手起業家に投資するエンジェル投資家も増えています。
あるいは硬いところで言えば、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」のように、新たに事業を始める人が無担保・保証人なしで融資を受けられる公的制度もあります。つまり、魅力的な事業プランさえあれば、お金を貸してくれる人はいくらでもいるということです。逆に言えば、もし事業プランを説明してもお金が集まらないのなら、それはビジネスのアイデアやプランがイマイチだから、という可能性が高いのです。
またアイデアについても、自分で1から考える必要などなく、どこかで成功しているモデルを持ってくればいいのです。「成功モデル」と「成功モデル」を掛け合わせ、自分の中でシナジーを起こし、投資家たちにビジネスプランを説明する。こうしたことを何度も繰り返していけば、今の時代、起業はそう難しいことではないということが見えてくると思います。
「上りのエスカレーター」に乗ることに徹底的にこだわる
「上りのエスカレーターに乗る」ということは、すなわち簡単に言えば、「業界全体が拡大していれば、そこに属する会社や個人も成長しやすくなる」ということ。逆に「業界全体が縮小していれば、そこに属する会社や個人が成長するのは難しくなる」ということです。
これは下りのエスカレーターを逆走して上へ駆け上がるのが、いかに大変かを想像してもらえばすぐ良く分かると思います。それに対して、上りのエスカレーターに乗れば自分は何もせずただそこに止まっているだけでもどんどん上がっていくことができます。
そうした上りのエスカレーターを見極めるために必要なのは「情報のハブ」を押さえることです。
孫社長が1995年に世界最大のコンピューター見本市を運営するコムデックスを買収したのも「情報のハブ」を抑えるためでした。当時3.3兆円で買収して話題になりましたが、「情報のハブ」を押さえ「上りのエスカレーターを見極める」といった観点から見れば、彼にとってその額は、決して高い金額ではなかったと思います。
事業を成功させるには情報のハブを押さえてどれが上りのエスカレーターなのかを正しく見極めることが重要だと知っておきましょう。
「ペイン10」を意識すべし
私、三木雄信のところに学生からビジネスマンに至るまで多くの方々がビジネスの相談に来られますが、「このビジネスは失敗するだろうな」というものには共通項があります。それは「ペイン」が低すぎるということです。
「ペイン」とは直訳すれば「痛み」ですが、ビジネスにおいては「顧客やユーザーが、リスクやコストを顧みずに、どれだけその商品やサービスを手に入れたいと望むか」を示す指数だと考えてください。
体のどこかに激痛が走り、「お金なんてどうでも良いから、今すぐにでもこの痛みをとって欲しい」というレベルが「ペイン10」です。
新規事業プランを作った人に、こうした言葉の定義を説明し「あなたのプランは、ペインでいうとどれくらいだと思いますか?」と言った質問をすると、「ペイン3くらいでしょうか」という答えがほとんどです。
ペイン3とは「別になくても全然困らない」というレベルです。残念ですが、これでは新規事業として成り立ちません。
最近では「社会課題を解決したい」という目的で起業する人が増えていますが、その方向性は正しいと思います。しかしながら「あったらいいよね」というレベルでは、ビジネスを継続するのは難しいと言わざるを得ません。
まとめ
いかがったでしょうか?これらのポイントを押さえ、次の段階ではサブスクリプション型に持っていき、最終的には海のように悠然で巨大なビジネスへと発展させていくことがゴールとなります。
もっと詳しい内容を知りたい方は私、三木雄信の著書「孫社長の締め切りをすべて守った 最速! 「プロマネ」仕事術 」の方も併せてご参照ください。
私は、これらのプロマネのスキルを活用しコーチング英会話トライズを立ち上げ、受講生4,500人以上という規模まで成長させることに成功しました。皆さんも是非、今回紹介したプロマネのスキルの内まずは一つだけでも身につけ、ご自分のビジネスを応用していただき、飛躍させていただきたいと願っております。
トライズは私、三木雄信が実際に英語力を習得するために行った学習内容を基にしたプログラムとなっております。みなさんもご存知の通り、これからの日本企業はより英語を重要視するようになっていきます。いざ英語が必要となった時に英語ができるようになっていることが、これからの時代を生きるビジネスパーソンとして大切です。少しでも英語を学びたいと思った方は、ぜひトライズの無料カウンセリングにお越しください。
皆さんの成功を期待します。