「上司を説得できる人はどんな流れで話を展開しているのだろう?」
「1つのコミュニケーションから次のアウトプットに繋げるには、どんなルール作りが必要なのだろう?」
多くのビジネスパーソンにとって、コミュニケーションの高速化に関する悩みは共通しています。なぜならば、現代の仕事の多くで他の人との協働が必要とされているので、短時間で効率よく意思疎通できる技術は仕事の出来に直結するからです。
私、三木雄信はコーチング英会話トライズを経営する他、様々な組織の活動に関わっています。20代のころ、ソフトバンクの孫正義社長の秘書として様々なプレゼンを見てきた経験を生かし、自身が関わる組織では質の高いコミュニケーション技術を導入しています。この技術を世に広めたいと思い、著書「孫社長のYESを10秒で連発した瞬速プレゼン」を上司しました。
本記事ではその中から、「瞬速プレゼンのフォーマット」や、「NOと言われた時の対処法」、「1つのコミュニケーションを必ずアウトプットに繋げる方法」をご紹介します。
目次
瞬速プレゼンの実際の手順
コミュニケーションの目的はアクションを引き出すことにあります。確実にアクションにつなげるためには「瞬速プレゼンのフレームワーク」を活用することがポイントです。実例を交えながら、瞬速プレゼンの流れを解説します。
準備
相手が意思決定を行うために必要な情報をまとめ、1枚の資料で全体が俯瞰できるように内容を整理します。
切り出し
つかみの一言として「○○の件です」と単刀直入に伝えます。これはコミュニケーションの目的が何であるかを理解してもらうためです。例えば「次のキャンペーンで使う代理店の件です」と始めます。
結論
最初に結論から伝えることで、話の着地を整理します。例えば「使うのはA社にしたいと思います」と伝えます。
理由
結論に至る理由を順を追って説明します。理由は1つではなく、できれば3つ出すと良いでしょう。3という数字はキリがよく、しっかりと印象付けることができるためです。スティーブ・ジョブズのプレゼンでも必ず理由は3つ挙げられています。例えば「コンペ参加の企業の中で最もコストが低いこと、納期への対応が確実なこと、過去に同種のキャンペーンで他社より高い実績を出していることが理由です」のように列挙します。
次のアクションの提示
「相手にどうして欲しいのか」という次の行動を示します。例えば「A社への発注書にサインをいただけますか?」と促します。
アウトプットの受け取り
相手がアクションを起こしたら、そのアウトプットを受け取ります。例えば「書類にサインをもらう」「次の工程へ進む了承をもらう」といった流れです。
最終確認
認識のズレをなくすために、いま決まったことを確認します。例えば最後に「では、次のキャンペーンはA社に発注します」と加えることで、相手の中にもはっきりとその理解が残ります。
以上が10秒でOKをもらうためのトークのフレームワークです。この流れを活用することで短時間のうちに意思疎通を図ることができるようになります。
言い訳や過剰な敬語は不要
コミュニケーションを高速化するためには、言葉の無駄をそぎ落とすことが重要です。先ほど説明したフレームワークに無駄がないように、言い訳や過剰な敬語は必要ありません。
報告がポジティブであってもネガティブであっても、きちんと理由を分析し、次にどうするかが含まれていれば怒る上司はいません。例えば、こう報告すると簡潔です。「今月の売上は対前月比で75%でした。理由は競合が同じエリア内に新規出店したためです。そこで対応策として、来月に新たな集客キャンペーンを計画していますので、その了承をいただけますか」
なお、上司から話しかけられた場合のNGワードに「大丈夫です」があります。仕事をしていたら、突然上司から「あの件、どうなった?」と聞かれることはよくあるでしょう。その時、「大丈夫です」と言ったら、上司はどう思うでしょうか。「何が大丈夫なんだ、それは君の主観だろう?今日の夜に時間をとるから、ちゃんと説明しろ」そして結局、コミュニケーションに余計な時間を取られることとなります。
報連相で重要なのは「事実」と「意見」を分けることです。大丈夫というのは、その人の主観に過ぎません。もし大丈夫であることを示したいなら、それを事実として伝える必要があります。「今月の売上は、目標値の前月比120%を達成できる見込みです」というように、数値で示すことで初めて納得してもらうことができます。
相手の意見を聞き、NOなら10秒以内に次のアクションを提示する
商談などの場合では、ようやく担当者に会えてプレゼンができても「では買いましょう」となることは非常に珍しいです。その場合にはまず相手の話を遮らず、大人しく受け入れるようにしましょう。なぜならそこで「相手がなぜ断ろうとしているか」が分かるからです。「英語の教育アプリですよね?うちの塾ではすでに別の英語教材を使っているので、これ以上は必要ないんですよ」このように、断る理由を教えてくれるはずです。
しかしここで「はい、わかりました」と変えるわけには行きません。そこで次に行うべきは「ネクストステップの提案」です。別の教科の提案を行ったり、用途の違う商品をオススメすることが商談を先に進める鍵です。そうして次のアクションを引き出し、アポイントメントを取り付けることが営業トークを成功させる秘訣です。
ネクストステップを提案するには、やはり準備が重要になります。営業なら、事前に相手の会社の事業内容など経営上の課題、顧客層といった情報を調べた上で、相手が何を欲しがるか見当をつけておく必要があります。
相手が無理なくやれるサイズに分割する
部下やプロジェクトのメンバーに仕事を依頼するときにも瞬速プレゼンは役に立ちます。期限直前になって仕事を回す上司やプロジェクトマネージャーに困った経験はないでしょうか?
相手のリソースを把握せずに仕事を頼んでしまうと、いくら上司であっても無理難題を押し付けていることになってしまいます。仕事を発注する側の役目は、ゴールから逆算して、早めのタイミングでメンバーに仕事を割り振ることです。その意識においては、自身の仕事で逆算思考を持つことと全く変わりません。
上司は気軽に「これ、やっといて」と言いますが、それが本人の能力を超える分量や難易度であれば「いや、ちょっと無理です…」と言われてしまいます。相手の状況や経験を見極め、それに合わせたサイズの仕事を依頼することが、仕事を発注する側に求められるリテラシーです。
急ぎの仕事を任せたいが、一人に依頼するのでは締め切りに対して仕事が重い場合には、作業を分割して割り振ることも必要です。すると部下達も「急ぎの仕事だけど、このくらいならできそうだ」と思って、すぐに了承してくれるはずです。
アウトプットはモノで定義する
上司にアクションを促す場合にも、部下に仕事をお願いする場合にも、必ずアウトプットをモノで定義しましょう。そうすることで次のステップにつながり、1つのコミュニケーションを必ず有効に活用できるようになります。
私も部下への質問に曖昧な部分があり、相手が指示の内容を勘違いしてアウトプットが出てこなかったという経験をしたことがあります。一度の指示で目的を果たせなければ、二度、三度とやり直しをさせることになり、コミュニケーションにも不必要に時間がかかります。必ずコミュニケーションの後には、モノで見えるアウトプットを確認しましょう。
まとめ
本記事では瞬速プレゼンの実例を交えて、最も実用的なコミュニケーション術を紹介しました。凝った表現は必要ないので、ムダを削ぎ落とした端的なやりとりで、相手にアクションを起こしてもらえるように説明しましょう。また、1つのコミュニケーションを成果につなげるために、必ずアウトプットをモノで定義するようにしましょう。
これらの方法を活用して、私はコーチング英会話トライズのスタッフとのやりとりも高速化しています。そのおかげでムダな会議に時間を使う必要もなく、生産性の高い仕事生活を送れています。瞬速プレゼンのより詳しい内容は著書「孫社長のYESを10秒で連発した瞬速プレゼン」でご紹介しているので、こちらも合わせて参考にしてください。