【孫正義奇跡のプレゼン】孫正義のプレゼンテーションの本質

プレゼンテーションの本質 ビジネス術

「プレゼンテーションはメッセージを共有し共感するための最良の手段である。」

みなさんはプレゼンテーションについて、どんなイメージをお持ちでしょうか?プレゼンテーションを行う側の本音としては、プレッシャーのかかる場面で緊張もするし、できれば避けたいという方が多く、聞く側としては、何だか文字と表ばっかりのスライドを見せられて、何も残らなかったという経験をされた方も少なくないのではないでしょうか。

私、三木雄信がソフトバンク時代に一緒に仕事をさせていただいた孫社長はプレゼンテーションこそが経営の中枢であるという考えをお持ちでした。なぜなら、そこから協力者や賛同者が生まれ、ファンが増えることを知っていたからです。そして彼はプレゼンテーションに対して確固たる、ある種の哲学を持っていました。

今回はその哲学から生まれるプレゼンテーションの本質について、ご紹介させていただきたいと思います。

そのプレゼンテーションに「戦略」はあるか?

「戦略とは情報を徹底的に集め、枝葉を除去し一番太い幹になるものだけに絞り込み、これをやらなければならないという急所を見つけること。つまり戦略の本質は、『略』すること」〜孫正義〜

孫社長は、ソフトバンクグループの将来の後継者を育成することを目的に設立したソフトバンクアカデミアにおいて、「戦略」について上記のように語りました。

これは彼のプレゼンテーションにも言えることで、孫社長のプレゼンテーションは全体としてバランスが取れており極めてシンプル、かつ骨太です。

多くのビジネスの現場では、上司や顧客から細かいところを突っ込まれないようにという守りの姿勢から、枝葉のロジックが重たくなってしまい、結果的に相手に何も伝わらないというケースが多く見られます。しかし聴衆にとってインパクトのあるプレゼンテーションにするには、「幹」となる1枚のスライドを用意し、そこから戦略的に全体を組み立てる必要があります。

聴衆にとっていかに分かりやすく、そしていかに胸に響かせるか。情報の受け取り手に努力を要求するプレゼンテーションでは、相手にインパクトを与えることができないということを忘れてはなりません。

プレゼンテーションの本質

メッセージをどうやってコンパクトにするか? 

「結論から言え、結論から」〜孫正義〜

孫社長のプレゼンテーションは、常にスライドごとのメッセージが非常にシンプルかつ強いものとなっています。スライドを一目見れば、聴衆が読むための努力をするまでもなく一瞬で理解することができます。

それは、孫社長が日頃から情報をコンパクトにまとめるように意識しており、1枚のスライドは必ず20文字以内というように決めているからです。

ただし、情報は少なければ良いということではありません。あらゆる角度の情報や概念、意見やその背景をうまく取り込み、取りこぼしがないように、20文字以内にまとめて伝えるということがポイントとなります。

この能力を高めるには当然訓練が必要となります。しかし訓練といっても、特別なことではなく、ツイッターや上司への報告など誰もが身近なところから始めることが可能です。

ソフトバンクの社員は孫社長への情報の伝え方がまずいといつも「結論から言え、結論から」と一喝され、それでもうまく伝えられないと「あと!」と言われるため、このあたりの能力は自然と身についていきます(笑)。

数字がプレゼンテーションを深める

例1:「システム開発の仕事に携わっていました。」

例2:「システム開発の仕事に10年間携わっていました。」

あなたの会社がもし、すぐにでもシステム開発の人材が必要となり、仮に質問ができないという条件下で、あなたが採用担当者なら、あなたはどちらを採用しますか?

おそらくBさんの方を採用する意見が多くなるでしょう。しかし、Aさんはもしかしたら15年間の経験があるかもしれません。この場合、Aさんは明らかに損したことになります。そのくらい、人に何らかの情報を伝える際、数字の持つ力は極めてパワフルであることが伺えます。

また数字は比較することで意味を成します。比較することで聴衆は傾向を掴み、やがてそこから後述の「歴史的必然性」への賛同者を巻き込むという展開に発展させていくことが可能となります。

さらに、数字で示された傾向であれば、ビジョンも分かりやすくなり、それを実行していく際に、適切になされているかも管理しやすくなります。

数字の持つ力を、みなさんも是非活用してみて下さい!

プレゼンテーションの本質

「歴史的必然」を会場の人々に感じさせろ!

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」〜オットー・フォン・ビスマルク〜

孫社長のプレゼンテーションでは、よく歴史の話が出てきます。これは過去を振り返り法則を共有することで、自社が今後展開していこうとしているビジネスがその延長線上にあるということを訴え、そのビジネスが歴史的視点から見たときに、必ず成功するという必然性と確信を、聴衆と共有し共感することが目的です

対象となっているビジネスや商品、サービスを近視眼的な消費者ニーズや競合会社への対策ではなく、大きな視野に立った「歴史的必然」で説明しなければなりません。そのためには、過去の歴史の底流に流れている法則を発見することが重要です。

孫社長は、「モバイル・インターネット No.1」「アジア・インターネット No.1」ということをスローガンに掲げてきました。

彼のプレゼンテーションでは、これは決してホラ吹きではなく、過去から続く農業革命、産業革命、情報革命そして情報革命の中にも第一次情報革命と第二次情報革命への移り変わりといった歴史的な流れと数字に裏打ちされたものであることがきちんと訴えられていたため、シンプルですが非常に骨太で説得力がある内容となっています。

こうした点は現在のビジネスの現場でも大変参考になる内容であると言えます。

プレゼンテーションする人が「主」でスライドは「従」

人間はまず感情が動かされ興味を持って初めて論理的に話を聞く準備ができます。このためプレゼンテーションで大切なのは、まず聴衆の感情を動かすことがポイントとなります。

しかしながら、多くのビジネスマンは論理で聴衆の心を動かそうとしているため、スライドに全てを語らせようとしてしまいます。その結果どうなるかというと、論理に塗り固められた文字ばかりのスライドを苦労して作った挙句、相手の心に響くプレゼンテーションができなかったという結果に終わってしまいます。

こうした事態を避けるためには、まずプレゼンテーションする人が「主」でスライドが「従」であることを忘れてはなりません。

スライドは1スライドごとに「1メッセージ・1イメージ」。聴衆にいかにイメージさせるか、つまり右脳に訴えかけるスライドを準備しておくことがポイントです。人間の脳では右脳がイメージや感情を司っていると言われています。イメージで右脳を刺激して会場の人々のプレゼンテーションへの興味を喚起しましょう。

プレゼンテーションの本質

まとめ 

いかがだったでしょうか?

今回の記事では、孫社長が経営の中枢に据えていたプレゼンテーションの本質についてお伝えさせていただきました。私、三木雄信もこうしたプレゼンテーションの本質的な考え方を駆使し、コーチング式英会話トライズ(TORAIZ)の経営にも利用させていただいています。

具体的な内容については 孫正義奇跡のプレゼン〜人を動かす23の法則〜 で紹介させていただいていますので、合わせてご覧ください。

次回からは、今回の本質的な概念を踏まえ、具体的にどのようにプレゼンテーションを作っていけば良いのかをお伝えさせていただきますので、どうぞお楽しみに!