「社会人が短時間で英語を身につけるためにはどのような学習法が良いのだろう?」
「使う教材や計画に自信が持てない…」
このように学習法に関する悩みをしばしば耳にします。
コーチング英会話トライズの代表取締役である私、三木雄信もかつては同じような壁に直面していました。私はソフトバンク孫正義社長の右腕として、海外のクライアントとのいくつもの難しい交渉をまとめてきましたが、もともと高い英語力があった訳ではありません。
最初の会議では英語力がないために、ほとんど発言することができませんでした。そこから一念発起し、1年間で「交渉に負けない英語力」を身につけることができました。その経緯は著書【海外経験ゼロでも仕事が忙しくても「英語は1年」でマスターできる】として公開しています
本記事は 【海外経験ゼロでも仕事が忙しくても「英語は1年」でマスターできる】 の中から「学習戦略」に関する内容を抜粋し、効率的に勉強を進めるための考え方をご紹介します。
目標から逆算して、やるべきことを決める
ビジネスで使える英語を1年という限られた期間で伸ばすには、目指す姿を明確に定義する必要があります。その上で、時間をかけるべきこと、かけるべきで無いことを区別します。
私の場合は「交渉で負けない英語力をつける」ことが目標でしたので、スピーキング力とリスニング力を高めることに特化しました。目的を明確にする利点については過去の記事にまとめてあるので参照してみてください( 【トライズ式英会話】三木雄信が開発した1年で確実に結果を出せる英語勉強法 )。
どのような分野でもそうですが、基礎練習と応用練習を交互に繰り返すことが短期間で上達する鍵になります。英語学習の場合は、単語・文法・表現を覚えるといった一人でもできる勉強が基礎練習、実際に話すことが応用練習です。
多くの人は「基礎が終わったら応用」と考えてしまいますが、私は平日に毎朝英会話のクラスを予約していましたので、「基礎→応用→基礎→応用」という繰り返しを1日の単位でこなすことができていました。特に語学では実際に話してみて初めて身につくものが多いので、アウトプットのトレーニングに時間を割くことを心がけてみてください。

言いたいこと1つにつき、覚える言い回しは1つだけ
ビジネスで英語を使うときに次に私が気をつけていたことは、「言いたいこと1つにつき、まずは1つの表現だけを覚えるようにした」ということです。普段皆さんは単語を覚えるとき、最初は核となる意味を1つだけ覚え、その後、付加的な意味を暗記していくと思います。これは言い回しについても適用できます
例えば「お元気でしたか?」と聞きたいときに、「How have you been?」1つ覚えておけば、どんなシチュエーションでも失礼に当たることはありません。しかし、「What’s up?やHow’s going?はカジュアルなシーンで使える」というように複数の言い方を最初から覚えようとすると、結局どれも思い出せないという状態になってしまいます。まずは表現を1つずつ覚えることが「使える英語」の近道と言えるでしょう。
単語・文法の勉強はしない
ビジネスマンが短期間で使える英語をマスターする際には、単語・文法の勉強にそれほど多くの時間をかけるべきでは無いと考えています。もちろん、やらないよりはやった方が良いのですが、先述のように優先順位を考慮するとスピーキングやリスニングに注力することが「交渉で負けない英語力をつける」という目標に合致しています。
それほど多くの語彙がなくても会話が成立する根拠として、私は孫正義社長のスピーチを分析しました。すると驚くべきことに、スピーチに出てくる単語の93%が日常会話で使われる単語を3000語集めた「Oxford 3000」という単語帳に収録されているものでした。
つまり、大学受験英語レベルが身についている人にとっては、今あるボキャブラリーで十分に話が展開できるということです。

このような話をするとよくある指摘が、
「ビジネスで使う専門用語を覚えなくては使えないのでは?」
というものです。この指摘は大いに的を射ています。私は会議の内容に関連する単語を1枚の用紙にまとめて、会議に持参するようにしていました。専門用語を片っ端から覚えていくというのは、単語の使用頻度の観点からするとあまり効率的ではありません。
そこで会議の予習を兼ねて、使う単語だけをまとめておくのが実用的です。仮にぴったりの単語が思い出せない場合にも、表現の言い換えなどで理解が通じることは良くあるので、単語だけに意識を向けなくても大きな問題はありません。
発音はこだわらない
最後に英語学習の先輩として、ビジネス英語を身につけたい人に重要なアドバイスを送りたいと思います。それは、「正しい発音、きれいな発音で話すことはあきらめなさい」ということです。
東洋英和女学院大学の高橋基治教授の研究によると、「子どもの頃に外国からアメリカに移住した人でも、11才以降に移住した場合は、その後もずっと外国語訛りが残る」という結果が出ています。
つまり、若くしてアメリカで暮らし始めても完璧な発音をマスターすることは難しいのです。ましてや社会人になって本腰を入れて英語の勉強を始めた人が、ネイティブ並みの発音を目指すことがどれだけ非現実的なことかお分かりでしょう。

発音を気にしすぎるのは、完璧主義になってしまい、アウトプットの練習ができなくなることに直結します。かなりの英語力を身につけた人が、さらなるブラッシュアップのために発音を練習するなら意味があると思いますが、私と同じように一から勉強を始めるのであれば、発音へのこだわりは一旦捨てた方が良いと断言できます。
その一方で、私は「発声」を意識することを推奨しています。発声とはざっくり言えば
意識的に声を低くする
喉の奥を震わせて話す (口先ではなく首のあたりを意識して)
ということです。
発声について自分なりに研究したところ、英語と日本語では発声の方法が大きく異なることがわかったのです。私がそのことに初めて気づいたのは、映画「マトリックス」を観ていた時でした。
ローレンス・フィッシュバーンが、キアヌリーブス演じる主人公に「The matrix is a system.」と説明するシーンがあるのですが、その台詞を話す声がとても低く、しかも喉を震わせて話しているのがはっきりと分かったのです。上記の2点を守ることでグッと英語らしい発音になり、ネイティブにもかなり聞き取りやすくなります。

まとめ
ビジネス英語を1年という短い期間で使えるようになる・身につけるためには、基本となる学習方針が非常に重要です。
私の場合はスピーキングとリスニングに焦点を当てて勉強し、求めるスキルに直結しないものにはほとんど時間を割きませんでした。
それが功を奏し、1年後には「交渉で負けない英語力」を身につけることができ、仕事でも大きな成果を上げることができました。皆さんも本記事で紹介した4つの項目を取り入れ、効率よく学習を進めてください。
著書 【海外経験ゼロでも仕事が忙しくても「英語は1年」でマスターできる】 やコーチング英会話トライズのHPでも学習プログラムの内容をご案内しています。合わせてご参照ください。