【孫正義奇跡のプレゼン】孫正義流プレゼンテーションの作り方

孫正義流プレゼンテーション ビジネス術

前回の記事では孫社長が考えるプレゼンテーションの本質についてご説明させていただきました。

今回はその本質を根底とした、具体的なプレゼンテーションの作成方法を、順を追って解説していきたいと思います。

ホワイトボードが「奇跡」を呼ぶ

ビジネスの現場では多くの場合、プレゼンテーションの案を作る際には一人でパソコンに向かってパワーポイントやエクセルを使い、作業に取り掛かろうとしますがこれは大きな間違いです。

私、三木雄信がソフトバンク時代に一緒に仕事をさせていただいた孫社長は、必ずプレゼンテーションの案を作成する際ホワイトボードを活用していました。彼は当然、パソコンを使いこなす技術は長けていましたが、決して一人で作ろうとはしなかったのです。

ではなぜ、ホワイトボードを使ったのか。それは聴衆の代わりとなるディスカッションパートナーや、専門家、反対意見の持ち主など、多方面の人物を交えた議論の上に出来上がったプレゼンテーションの方が、独りよがりにならず、様々な考え方や専門的知識を包括した、説得力のあるものに出来上がることを知っていたからです

ディスカッションは可能な限り図解してホワイトボードに書くことを通じて行います。 このときにコンセンサスの取れた物については最新化して上書き保存します。

特に孫社長はホワイトボードに詳細な意見まで書き込ませることにこだわりました。その理由は、詳細な意見を緻密に記載することによって、議論が散漫になることを抑え、ディスカッション終了後のスライド作成のための1資料となるからです。

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またシンプルなワードにメッセージを込める際にも、そうした詳細な情報を無視したメッセージでは、相手に与えるインパクトが弱くなってしまうからです。

こうして熱い議論と緻密な専門的意見の末にみんなで完成させたプレゼンテーションは当然のことながら、一人でパソコンに向かって完成させたプレゼンテーションとは比較にならないほどの熱いエネルギーを持って聴衆にインパクトを与えます。みなさんの職場でも是非活用してみて下さい。

誰もがわかるプレゼンテーションにこそ意味がある

孫正義流プレゼンテーション

孫社長は2000年ごろ、日本債権信用銀行から、当時ソフトバンク、オリックス、東京海上火災保険からなる企業グループで、株式譲渡を受けるという案件を処理していました。しかしながらこの時、孫社長の意に反して、銀行側から正常債権に対する瑕疵担保条項を盛り込むことを要求されたのです。

この件に関しては、当時国民や専門家の間でも物議を醸しましたが、これに対し孫社長は「腐ったリンゴは返品させて下さい。」という表現を用いることで、この条項は飲まないということを毅然とした態度で自分の姿勢を明らかにし、世論の理解を得ることに成功したのでした。 

このようにビジネスの現場では、分かりにくい内容を誤解の内容にいかに相手にとってわかりやすい表現に置き換えられるかがポイントとなります。孫社長はこの点についてはかなり重要視しており、難解な言語や専門用語が出てくる度に、いかにわかりやすい表現で例えるかを考えてプレゼンテーションを行っています。

わかりやすい表現をするには、まず複雑な事象の全体像と本質をつかみ取ることが大切です。事象の本質についてはより深く考え背景にあるものを捉えることも重要です。

本質が掴み取れたら、次にその本質を反映したメタファー(暗喩)に置き換えます。メタファー(暗喩)に置き換える時は可能な限りシンプルかつ相手にとって身近な物に置き換えて表現することを意識しましょう。メタファーは具体的なビジュアルで示すことで、より一層聞き手にとって強烈な印象を与えることが可能となります。

孫正義流プレゼンテーション

「鯉」を抱き取るプレゼンテーションか

皆さんは「鯉とりまあしゃん」の話をご存知でしょうか。「鯉とりまあしゃん」とは九州の方言で「鯉とりのまさおさん」ぐらいの意味ですが、本名は上村政雄さんという方で九州の筑後川で独自の鯉の漁法「鯉抱き」つまり鯉のつかみ取りをしていた実在の人物です。

彼は12月の極寒の筑後川で鯉とり漁をする際、漁の前日から脂の乗ったスタミナのつく料理を食べて体調を整えました。そして河原で焚き火にあたり、一服しながら体を温めます。体から湯気が立ち上るほど温まると川に入り川底の鯉の巣に向かい 横たわります。

すると冷たい水の中で鯉たちがまぁしゃんの温もりを感じて自然と近づいていきます。まーちゃんはそれを優しく抱きかかえて川底から上がってきます。

こうした漁法により、まぁしゃんは1日100匹もの鯉をとったこともあり、その光景を一眼見ようと全国から人が押し寄せてきたという地元では有名な伝説として受け継がれているそうです。

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この話は、当然プレゼンテーションを作る際にも忘れてはならないポイントとなります。よくビジネスの現場では相手を説得させようとして失敗したり、成功しても何かしこりが残るということが少なくありませんが、 そうではなく、まぁしゃんの例のように、「相手のニーズにフォーカスしたプレゼンテーションの内容になっているか」を意識しなければ、相手にとって的外れな提案になってしまいがちです。

相手が求めていることは何なのか。ここをしっかりと意識してプレゼンテーションを進めていくことが、成約の鍵となります。

孫正義流プレゼンテーション

リスクをチャンスに変えろ!

ビジネスの将来は常に不確実です。現在でも新型コロナウイルスの影響で、各方面で予想外の事態に直面し、重要な判断を強いられている方々も少なくないでしょう。

こうした事態はつい半年前まで、誰も予想しておらず、また今後のことについても、各方面の専門家は様々な角度から将来を予測したコメントを発表していますが、 それらが将来発生する確率は全くわかりません。

しかし、だからといってリスクを恐れた萎縮したプレゼンテーションを作っていては 相手に何も伝わらないことになります。そのため、相手の心に響くプレゼンテーションを作るためには、こうしたリスク(不確実性)に対して果敢に切り込む必要があります。

では、どのようにすれば良いのか。

それはリスク要因を違った角度から見てプレゼンテーションすることがポイントとなります。「成功するか失敗するか分からないけど、あなた方と提携して、このビジネスを進めたい。」あるいは「こうしたリスクがありますが、自己責任でお願いします。」では相手の心が動かされることはありません。

そうではなく、「このビジネスにはこうしたリスクが内在しています。そのリスクは細かく分けると、AとBとCです。今回の提携ではこれらの要因を極限まで抑制させた内容となっているため、成功する可能性は高いと言えます。」というように受け手の考えるリスクを徹底的に抑えることが鍵となります。

こうすることにより、相手にとって受け入れやすいリスクの形に加工できたと言えるでしょう。

まとめ

いかがだったでしょうか?今回はプレゼンテーションの具体的な作り方について解説いたしました。どの項目でも徹底的に情報の受け手の立場に立ってプレゼンテーションを構成していくことが大切であるということがお分かり頂けたと思います。

内容をもっと詳しく知りたい方は孫正義奇跡のプレゼン〜人を動かす23の法則〜で詳細を解説していますので、そちらも合わせてご参照ください。

私、三木雄信もこうしたプレゼンテーションのノウハウを武器にコーチング式英会話トライズ(TORAIZ)を立ち上げることに成功し、現在までに4,500名以上の受講生の方々からご好評をいただいています。

次回はプレゼンテーションの効果を劇的に上げる10の方法について解説して参りますので、お楽しみに!