前回までの記事では、プレゼンテーションの本質、プレゼンテーションの作り方、プレゼンテーションの効果を劇的に高めるためのテクニックまでお伝えいたしました。 今回はそうしたプレゼンテーションを展開するために必要な、成功を左右する4つの準備について解説して参ります。
俳優が良い演技をするためには当日のアドリブだけに頼るのではなく、本番までの間に施した準備がものをいうのと同様に、プレゼンテーションをする人がプレゼンテーションを成功させるためには当然、それなりの準備が必要となります。
今回はそうした観点から、具体的にどのような準備をすれば良いのか解説させていただきますので、是非最後までお付き合い下さい。
それでは始めていきましょう!
プレゼンテーションの準備の準備
プレゼンテーションには通常の場合、一定の決まりごとがあります。例えば、プレゼンテーションの制限時間や質疑応答の時間を設けるか設けないか、あるいはプレゼンテーション資料の配布の有無などです。時間的なシミュレーションが曖昧で結果的に時間が伸びてしまったり、あるいは質疑応答の時間を省略する羽目になったりするという事態は、絶対に避けなければなりません。
こうした観点から、まず最初にやるべきことは自分のプレゼンテーションの1スライドあたりの標準時間を知ることです。一般的にビジネスパーソンのプレゼンテーションは1スライドあたり3分程度が平均と言われていますが、聴衆がプレゼンテーションをする人と同じ業界でない場合や、学生などを対象にした場合は、1スライドあたり4分以上かけてゆっくりと丁寧に話をした方が良いとされています。
こうした1枚あたりの自分の標準時間を知った上で、割り当てられた制限時間をもとに、何枚の構成でプレゼンテーションを組み立てるのかを逆算していきます。
また、手元資料を配布するか否かの事前に決めておく必要があります 。ちなみに孫社長は基本的にプレゼンテーションの手元資料は事前配布しないというスタンスを取っています。なぜなら手元資料を事前に配布すると聴衆が資料ばかりを見るようになり、またプレゼンテーションをする人の話やプロジェクターの画面、手元資料の三つの情報を同時に処理することになるためプレゼンテーションを集中して聞くことが困難になります。
プレゼンテーションする人と聴衆が一体となるためにも、スライドや関連資料は事後に交付するようにするか、あるいは予め聴衆のメールアドレスを確認し、事後的に参加者限定で動画配信するなどのサービスも良いでしょう。
こうしたプレゼンテーションの準備の準備が、聴衆の満足度や理解度を高めていきます。
プレゼンテーションの環境に注意を払え
私、三木雄信がソフトバンクで秘書室長として働いていた当時、ソフトバンクの社長室には「孫正義が大事なプレゼンテーションをする時に限ってパソコンがフリーズする」というジンクスがありました。
ソフトバンクに限らず、IT 企業にとって大事なプレゼンテーションでパソコンがフリーズするというのは実にみっともないことですが、現実にはプロジェクターなどの機材や無数にある携帯電話からの電磁波の影響を受けてか、そうした事態は世界中のあちこちで実際に起きています。
こうした事態に対応するためにもパソコンは常に2台用意し、どちらにもプレゼンテーションのデータを事前に入れておいて一台が不調になればいつでも交換できるようにしておく必要があります。
また、プレゼンテーションにはあらかじめリモコンを用意しておくと良いでしょう。リモコンを持つことによってプレゼンテーションする人が手を自由に動かし、舞台の上を歩き回ることが可能になります。
次にマイクは、襟元に付けるワイヤレスピンマイクをお勧めします。手に持つマイクの場合、どうしても片手を口元に向けて持ち続けることになるため、ジェスチャーが片手だけになり、また腕を閉じたポーズになってしまいがちであるため、聴衆に対して躍動感やオープンなイメージを与えることが難しくなってしまいます。
さらに照明に関しては、いつもつけておくようにしましょう。これは以前の記事プレゼンテーションの本質の記事でもお伝えした通り、「プレゼンテーションをする人が『主』でスライドは『従』」という考え方に基づくものです。細かいテクニックから準備に至るまで、孫社長のプレゼンテーションの本質的な考え方は、全てに行き渡っているのです。
会場の人々の心をつかむ小道具を使え!
2011年4月孫社長は東京で「自然エネルギー財団」の設立を表明しました。この時に孫社長は放射線を測定するガイガーカウンターを取り出し、その会場の放射線量を聴衆に伝え、放射線量リスクが東京でも厳然として存在していることを会場の人々に認識させたのでした。
このようにプレゼンテーションの一部として、小さな小道具を使って説明することは聴衆の集中力を一気に高めるために非常に有効な場合があります。
また新しい商品やサービスなど、過去の経験から推測のつかない事やイメージが沸きづらいことに関しては、なおさら言葉だけよりもはるかに説得力があると言えます。
新しいもの好きの先進的ユーザー層である、いわゆるイノベーターやアーリーアダプターと言われる層を越えて、より広いユーザー層(アーリーマジョリティ)を獲得しようとするならば、こうした小道具を用いたデモンストレーションが非常に有力な手段です。
プレゼンテーションで最も伝えたいことは何か。そしてそのために最も有効な小道具は何か。これを考え予め準備しておくことも、プレゼンテーション成功の可否の鍵を握る重要なポイントと言えます。
動画をプレゼンテーションに活用しろ!
孫社長のプレゼンテーションでは、よく本人がステージに現れる前に、先にその日のプレゼンテーションの内容の序章となる動画を流すことがよくあります。これは聴衆のプレゼンテーションに対する期待感を高め、集中力を一気に高めることが目的です。
またプレゼンテーションの最後をイメージ動画で締めくくることもよくあります。これはビジネスの現場でも、デートの時も、別れ際の挨拶が肝心であるのと同様に、人間にとって最後の印象はその後もずっと残り続けるため、その日のプレゼンテーションを論理だけでなく、イメージとしても持ち帰ってもらうことが目的です。
人は静止しているものよりも動いているものに注意が向くと言われています。孫社長は人間のこれらの特性をよく知ってか、プレゼンテーションの至る所で、こうした動画を活用しています。
また、その日の来場者だけでなく、より多くの人々にプレゼンテーションの内容を認知してもらいたい場合はYouTubeなどの動画配信サービスを活用することも検討しましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?今回までの5つの記事の内容で、プレゼンテーションとは、現代の日本のビジネスの現場のあちこちで行われているような、文字ばかりが羅列されたスライドが用意され、プレゼンテーションする人がマイクを持って原稿を棒読みするような、そんなつまらないものではなく、実際にはかなり奥が深く、如何様にも工夫することができ、また可能性に満ちたビジネスツールであることがお分かりいただけたと思います。
私、三木雄信はこうしたプレゼンテーションのノウハウを活用し日本初のコーチング式英会話トライズ(TORAIZ)を立ち上げ、現在の経営にも役立てています。皆様のビジネスの現場でもご活用いただけたら、私、三木雄信にとってこの上ない喜びです。
さらに詳細を知りたいという方は私の著書である「 孫正義奇跡のプレゼン〜人を動かす23の法則〜 」をご参照下さい。
今後もこうした、あなたのビジネスにとって役立つ記事を展開して参りますので、どうぞご期待下さい!
それでは、また!