前回の記事では、今後のビジネスパーソンにとってプロジェクトマネジメント(以下プロマネ)のスキルがなぜ必要となってくるのかを解説して参りました。 今回の記事では、そのプロマネの仕事をいかにして進めていくか、その基本的な流れについて解説して参りたいと思います。
あなたのビジネスに今日からでも使っていただける内容となっていますので、是非最後までお付き合いください。
それでは早速、進めていきたいと思います。
はじめに
プロジェクト開始から終了までの「四つの段階」
まず、プロジェクトには4つのフェーズがあります。
それは以下の通りです。
- 立ち上げ
- プランニング
- 実行
- 評価
一つ一つ具体的に見ていきましょう。
立ち上げ
プロマネの仕事全体の中、立ち上げの段階で勝負はほぼ決まると言っても過言ではありません。その第一歩がプロジェクトマネージャーを決めることです。プロマネを決めなければ情報が錯綜し、行き違いが起こります。プロマネが情報のハブの役割を担うことで 常に全員が最新の状況を把握することが可能となります。
次になすべきことはプロジェクトのオーナーを明確にし、オーナーから話を聞くことです。オーナーとはプロジェクトの依頼人であり最終決定権者のことです。 オーナーが誰なのかはっきりしない場合は往々にしてプロジェクト全体が泥沼化しデスマーチに突入する羽目になります。しかしながらオーナーを明確にすることによりそうした混乱をあらかじめ避けることが可能になります。
ただしオーナーは、権限はあっても実務者ではない立場の人が多いので、現場のことは知らないケースも往々にして発生します。このため プロマネ自身も現場の状況を把握し、オーナーとの間にゴールイメージの ズレが生じないよう、ある程度の知識をつけておくことも忘れてはなりません。
こうしたプロセスを経てプロジェクトのステークホルダーを漏れなく把握します。ステークホルダーに見落としがあった場合、その人物(あるいは部署等)から、後から何か言われたり、あるいは法的もしくは技術的な見落としを指摘されるなどして、プロジェクト全体に手戻りが発生するということにもなりかねません。だからこそ、プロジェクトのステークホルダーを漏れなく取り込むことが大切なのです。
チャーターの作成
そしていよいよプロジェクトの「チャーター」の作成に入ります。 「チャーター」とはいわゆる「権限移譲証明書」のようなもので、オーナーからのお墨付きをもらうためのものと言っても良いでしょう。
チャーターの構成は以下の通りです。
- プロジェクトの目的・ミッション、ゴールイメージ、求められる成果物
- プロジェクト・オーナー名、プロジェクト・マネージャー名
- ステークホルダー一覧
- 数値でチェックできる目標と関連する成功基準
- 前提条件
- スケジュール(納期)とマイルストーン
- 予算
こうしたチャーターの全体像を明確にオーナーに提示し、承認を得ることによって、プロジェクト・オーナーとの行き違いを防ぐことが可能となります。
オーナーの承認が得られれば、あとはステークホルダーを集めキックオフミーティングを開催し、プロジェクトを開始します。
プランニング
プランニングの第一段階でやるべきことは「すべてのタスクをもれなく出してしまう」ということです。この際、プロマネが一人でタスク出しをすると、必ず抜けや漏れが発生するため、タスク出しをするときは必ずメンバー全員で一緒に行なうのがベストです。
タスクは後の「分類」という作業に入りやすくするため付箋を利用するのが良いでしょう。これも会議の場で発言という形をとると遠慮が出てしまい、本来やならければならないタスク出しに漏れが生じるリスクが発生します。ステークホルダー全員に付箋に書いてもらうという形をとるとこうしたリスクを回避できます。
ゴールまでにやらなければならないタスクをすべて付箋に書き出し、関連するものや似たようなものがあった場合は、付箋を一箇所にまとめていきます。
「これはシステム開発の納期の問題だよね。」
「これはリーガルチェックが必要だ。」
こうして、分類していくといくつかの付箋の塊が出てきます。
今度はそれらをフィッシュボーン(魚の骨)チャート的に整理して行きます。一覧できる形にまとめられればその時点でプロジェクト7〜8割成功したと言っても過言ではありません。
あとは、それぞれのタスクの所要時間の見積もり、タスク間の依存関係の整理を確認した後、全体のスケージュールを調整します。
プロジェクトマネジメントシート
スケジュール調整には「プロジェクトマネジメントシート」をお勧めします。このシートには「誰が、いつまでに、何をするのか」が明確に書かれています。後にご紹介する週次の定例会で、これらの進捗を確認し最新版にアップデートしていきます。
また、タスクは一週間で出来るサイズに小分けにして管理していくべきです。全てのメンバーが自分に与えられたタスクを期日までにやり遂げ、プロジェクトを進めていくためには誰もが確実にできるサイズにまで仕事をブレイクダウンすることが必要です。プロマネは命令をする立場ではなく、メンバー全員が無理なく仕事を回せるようそれぞれのスキルや経験のサイズに応じてタスクを小分けするのが大事な役目ということです。
実行
実行段階におけるプロマネの最大の仕事は、週に一回、決められた曜日と時間にプロジェクト関係者が全員集まった定例会を行うことです。定例会でやるべきことは各メンバーのタスクの進捗確認です。
決まった曜日、決まった時間にメンバー全員が一斉に情報をアップデートする機会を設けることで、「もう少し自分で何とかしてみよう」などと考えてプロジェクトの問題点などの情報がプロマネに上がってくるのが遅れるというリスクを排除することが可能となります。
進捗確認はタスク管理シートと各メンバーのアウトプットの差を確認することで行います。もし遅れが発生している場合はタスクをさらに細分化し、余裕のある他のメンバーに助けてもらうなどの是正措置を講じます。このようにチーム全員の時間と知恵を平準化し、出来る限り100%使い切ることで全体の仕事を効率よく進めることができます。
メンバーの助け合いを促したりそのための仕組みや環境を整えたりすることこそがプロマネの仕事とも言えます。
ここで即行動につながる会議のコツについて以下の通りまとめましたので、一緒に見ていきましょう。
- 物事を決めるのに必要な権限と情報を持った参加者を揃える
- 会議の議題を明確にし、事前に参加者と共有しておく
- 出てきた話について「報告」「決定」「未決」を分ける
- 「何を」「誰が」「いつまでに」やるかを明確にする
- 会議の最後に、全員で議事録を共有する
こうしたポイントを押さえた定例会を週一回ごとに確実に開催し進捗確認を継続していくことで計画と実行の間のズレを最小限に抑えることが可能となります。
確かに権限と情報を持った参加者を毎週決まった曜日と時間に集めるということは簡単なことではありません。しかしながら最近では「Zoom」「Teams」「chat work」と言った便利なシステムがありますので交通費や会議場に向かうまでの時間も削減できることが可能になっています。
あくまで「全員で進めていくのだ」という意識をメンバー全員が共有することも目的となりますので、こうしたシステムを是非ともフル活用していきましょう!
評価
プロジェクトが完成したらオーナーに提出し評価を仰ぎます。フィードバックを受けたらそれらをフォーマット化し、次回プロジェクトの参考にしていきます。
決して、やりっぱなしのうちに反省点も明確にさせず、うやむやに済ませるということだけは避けなければなりません。
まとめ
いかがだったでしょうか?今回はプロマネ仕事術の具体的な進め方について説明させていただきました。こうしたテクニックは皆さんのビジネスの現場のみならず、地域活動や、親族間での行事、それから個人で何か新しいスキルを身につけるという場面でも活用していただけると思います。もっと詳しく知りたい方は私、三木雄信の著書「孫社長の締め切りをすべて守った 最速! 『プロマネ』仕事術」に掲載してありますので、是非ともそちらも併せてご参照ください。
私は、これらのプロマネ仕事術のノウハウを活用しコーチング英会話トライズを立ち上げ、受講生4,500人以上という規模まで成長させることに成功しました。皆さんも是非、プロマネのスキルを身につけ、ご自分のビジネスを飛躍させてください。
次回は、プロジェクトを進めていく上での「想定外 &トラブル」を乗り越えていくためのリアルノウハウについてご案内させていただきますので、どうぞお楽しみに!